ArcGIS Pro 3.3 で新たに洪水シミュレーションが追加されました。
本ブログでは、洪水シミュレーションの作成方法、建物データを利用した活用例、出力についてご紹介します。
洪水シミュレーション機能は、Advanced ライセンスでのみ利用可能です。
洪水シミュレーション
洪水シミュレーションは、定義済みの対象エリア内で浅水方程式を使用して、シーン内で水がどのように移動して集積するかをモデル化します。また、ダムや貯水池のレイヤーを加えることで現実に即したシミュレーションができるほか、水路や水源、バリアといったエレメントを任意で追加することで、多様なシチュエーションでシミュレーションできます。
解析では、精度を高めるため投影座標系に設定されたローカル シーンの使用を推奨しています。
詳細は「洪水シミュレーションのシナリオ作成」をご参照ください。
実行方法
洪水シミュレーションは、[解析] タブ → [ワークフロー] グループ → [シミュレーション] からアクセスできます。
1. ビューを操作し、解析を行いたい範囲を設定します。
2. [シミュレーションの構成] ウィンドウの [降雨強度] パラメーターで対象地域内に、どの程度の雨が降るのか、 [期間] と [強度] を設定します。ダムや川などの地域を解析する場合は、開始水位をラスターで定義することによって、限界水位に近いダムや川の状況を再現できます。
実行時に表示されているレイヤーを使用し、解析用の標高サーフェスが作成され、算出された水の移動と集積がビュー内に表示されます。
シンボル変更
[シンボル] ウィンドウの [変数] パラメーターでは、[流量] と [水深] の 2 種類のパラメーターから目的に応じて結果を変更できます。 また他のレイヤーやフィーチャ同様にシンボルの配色を変更できる上、洪水表示タイプでは、レイヤーの表示方法を以下の 3 種類から選択できます。
Project PLATEAU の建物データを利用した活用例
洪水シミュレーションは、任意のレイヤーを追加して、その条件下でのシミュレーションが可能です。例えば、Project PLATEAU の 3D 都市モデルの建物モデルを追加して、建物がある場合の条件で解析を行うことができます。
Project PLATEAU の建物データは、Living Atlas of the World で公開されています。ArcGIS Pro での Living Atlas からの追加方法については、「ArcGIS Online の Living Atlas を利用する」をご参照ください。
洪水シミュレーションの解析範囲に建物モデルを追加することで、建物がある場合の解析を行うことができます。建物モデルを活用することで、水が建物間から流れる様子や建物でせき止められ、浸水する地域を結果から読み取ることができます。
また、洪水シミュレーションの [挿入エレメント] を使用することでより多様なシチュエーションにおける解析ができます。
以下の図は挿入エレメントの [水路] を使用した例です。
フラットな標高サーフェスに溜まった水を、より低いサーフェスへ流すための水路を作成できます。住宅地や道路上に溜まった水を近くの川や海に排水し、水害リスクを低減するといったシミュレーションができます。
詳細は、「エレメントを使用してシミュレーションを変更」をご参照ください。
出力方法
シミュレーション結果を GeoTIFF 形式のラスターとして出力ができます。出力時に以下の 3 種類から任意の出力間隔を選択できます。
- レイヤーのキャッシュ間隔を使用
デフォルトの設定でキャッシュされた画像がすべて出力
- 反復回数
任意の設定した回数分画像が出力
例: 30 分の解析で 10 回と設定した場合、3 分間隔ごとに解析結果のラスターが出力されます。
- 時間ステップ
設定した時間間隔 (15 分間隔など) で生成される解析結果のみが出力
出力された TIFF 画像は、フォルダー内に格納されます。
出力された画像の活用
出力された画像は、ラスター データとして、ArcGIS Pro に追加して表示できます。
ラスター データとしての追加は、Basic、Standard ライセンスでも可能です。
また、カタログ データセットやモザイク データセットに出力した GeoTIFF をまとめて格納し、時間フィールドを加え、タイム スライダーでアニメーション表示が可能です。