新年おめでとうございます。2025 年最初の記事は、ArcGIS Living Atlas の 1 年を振り返ってみます。
ArcGIS Living Atlas of the World(以下Living Atlas)とは、米国 Esri 社、ESRIジャパンや政府機関など、世界中の ArcGIS Online ユーザーが公開しているコンテンツを集めて紹介するコレクションです。Living Atlas には、米国 Esri 社や世界中の ArcGIS ユーザーが日々新たなコンテンツを追加しています。
本ブログでは、ESRIジャパンが 2024 年 1 月 ~ 12 月に登録したデータをいくつかご紹介いたします。
目次
3D 都市モデル(Project PLATEAU)
2020 年、国土交通省が推進する日本全国の都市デジタルツイン実現プロジェクト PLATEAU project から、G 空間情報センターに 3D 都市モデルが公開されました。ESRIジャパンは、本データをファイル ジオデータベースに変換・加工し札幌市や横浜市など 56 都市を Living Atlas に登録しました。これに加えて、2022 年に新しく公開された 京都市をはじめ名古屋市や大阪市、さいたま市などの 35 都市を新たに Living Atlas へ登録しました。
3D 都市モデルには、地物の詳細度を示す「LOD(Level of Detail)」が定義されています。Living Atlas で公開されているデータは、 直方体の組み合わせで構成された、高さの情報を含んだ LOD1 と、屋根や壁などのテクスチャが付いた LOD2 で作成しています。
3D 都市モデルの利用促進に ArcGIS を活用いただくため、 ArcGIS における 3D 都市モデルの活用事例を集めたサイトも公開しています。
南海トラフ 津波浸水分布図
令和 6 年 8 月 8 日に南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)が気象庁より発表されました。この呼びかけは同月 15 日に終了しましたが、南海トラフ巨大地震の脅威は未だ過ぎ去ったわけではありません。
内閣府の南海トラフの巨大地震モデル検討会では、津波断層面のすべりが大きい地域(大すべり域、超大すべり域)は過去の南海トラフ巨大地震ごとに異なるので、各箇所に大すべり域・超大すべり域を設定した 1 ~ 11 ケースを検討しています。
これを基にESRIジャパンでは 2022 年に以下の 4 ケース登録しています。
- 南海トラフ 津波浸水分布図 ケース①(超大すべり域:駿河湾-紀伊半島沖)
- 南海トラフ 津波浸水分布図 ケース③(超大すべり域:紀伊半島沖-四国沖)
- 南海トラフ 津波浸水分布図 ケース④(超大すべり域:四国沖)
- 南海トラフ 津波浸水分布図 ケース⑤(超大すべり域:四国沖-九州沖)
ArcGIS Online のアップデートに伴い、グループレイヤーとして Living Atlas に登録することが可能となりました。そこで以前から公開していた南海トラフ巨大地震の被害想定レイヤーのうちケース 6 からケース 11までの 6 ケースを、お使いやすくなるようグループレイヤーとしてまとめて新たに登録しました。
- 南海トラフ 津波浸水分布図 ケース⑥(超大すべり域・分岐断層:駿河湾-紀伊半島沖)
- 南海トラフ 津波浸水分布図 ケース⑦(超大すべり域・分岐断層:紀伊半島沖)
- 南海トラフ 津波浸水分布図 ケース⑧(超大すべり域:「駿河湾-愛知県東部沖」と「三重県南部沖- 徳島県沖」)
- 南海トラフ 津波浸水分布図 ケース⑨(超大すべり域:「愛知県沖-三重県沖」と「室戸岬沖」)
- 南海トラフ 津波浸水分布図 ケース10(超大すべり域:「三重県南部沖-徳島県沖」と「足摺岬沖」)
- 南海トラフ 津波浸水分布図 ケース11(超大すべり域:室戸岬沖・日向灘)
多段階浸水想定(国土数値情報 令和5年度)
2024 年 6 月、国土数値情報から多段階浸水想定データがオープンデータとして公開されました。本データは、河川管理者(地方整備局)が水系単位で作成した多段階浸水想定図データです。多段階浸水想定図とは、発生する降雨規模(年超過確率:1/10、1/30、1/50、1/100、河川整備の計画規模(1/150又は1/200))毎に作成された浸水想定図です。
ESRIジャパンは、この年超過確率ごとの多段階浸水想定データをまとめ、浸水値で色分けした「多段階浸水想定(国土数値情報 令和5年度)」を Living Atlas に登録しました。6 段階の浸水深と 3 段階の浸水深ランク、そしてその浸水深ランクになる降雨の発生確率が属性として含まれます。
その他にも、年超過確率(1 年間にある量以上の降雨が発生する確率)を「浸水が発生する確率」と解釈し、発生確率別に色分けした水害リスク、発生確率ごとのレイヤーをグループレイヤーとしてまとめた発生確率別浸水想定も同様に、Living Atlas に登録しています。
用途地域(都市計画決定GIS)
国土交通省は、全国の都市計画決定 GIS データを整備したデータベースを無償で提供しています。都市計画決定に関するデータには、都市計画区域や高度利用地区、地区計画などがあり、ESRIジャパンは、それらのうち住宅地、商業地、工業地などの用途別の土地利用状況を示した用途地域を登録しました。
都市計画決定 GIS データのうち公園データも、全国分を統合し「公園・緑地・墓園(都市計画決定GIS)」として Living Atlas へ登録しています。
駅別乗降客数(国土数値情報 令和4年度)
2024 年 9 月、ESRIジャパンは、国土数値情報から公開されている各駅の 2011 年から 2022 年までそれぞれの乗降客数が収録されている駅別乗降客数を登録しています。乗降客数だけでなく、運営会社や路線名などの情報も収録されており、ポイントデータへ変換した駅別乗降客数ポイントも登録しています。2024 年 6 月に国土数値情報が公開してからは、商用利用も可能になりましたので、ぜひご利用ください。
まとめ
2024年には高潮浸水想定区域、洪水浸水想定区域、土砂災害警戒区域、津波浸水想定、確率論的地震動予測地図(平均ケース・最大ケース)などの災害リスクデータや学校データ、鉄道データ、地価公示など様々なデータを登録・更新しました。本ブログでは紹介しきれなかったデータも数多く登録・更新されています。ESRIジャパンでは、今後も Living Atlas コンテンツの整備・拡充に取り組んでいきます。ぜひ Living Atlas にアクセスして、様々なデータをご活用いただければと思います。
本年も ArcGISブログをどうぞよろしくお願いいたします。