衛星画像もオープンな時代に? ― Sentinel-2 on AWS から無償で衛星画像データをダウンロードできます!

更新記事はこちら → Sentinel-2 の衛星画像データの入手先まとめ & ArcGIS Pro でのデータの利用方法(2018 年 12 月 7 日)

Image Browser

誰でも無償でダウンロードできる衛星画像といえば、Landsat シリーズが有名ですね。

Landsat の魅力は、なんといっても 1970 年代から現在まで継続して衛星画像が取得されているという点です。Landsat は長期間のモニタリングや経年変化などを把握するのに大活躍している衛星ですが、マルチスペクトル画像の地上分解能は 30m とあまり高くありません。

長期間の観測データはいらないけれど、もう少し地上分解能が高い衛星画像を無償で使いたい!という場合、AWS(Amazon Web Services)のクラウドサービスを利用して配信されている Sentinel-2 の衛星画像を使ってみてはいかがでしょうか。

インターネットに接続可能な環境であれば、誰でもデータにアクセスでき、無償でダウンロードすることができます。

■Sentinel-2 とは?

Sentinel-2 は、ヨーロッパの地球観測光学衛星で、全部で 13 バンドの観測波長帯を持っています。地上分解能は可視光(マルチスペクトル)で 10m(!)、植生では 20m、雲分解では 60m となっています。Sentinel-2 の衛星画像は、土地被覆変化の把握や環境モニタリングをはじめ、自然災害、農業(作物)の生育状況の把握など、リモートセンシングの幅広い分野で活用されています。

※ Sentinel-2 の詳細については リモート・センシング技術センターの衛星総覧をご覧ください。

■Sentinel-2 on AWS とは?

Amazon 社が Web 事業者・開発者向けに提供しているオンラインサービス群を AWS(Amazon Web Service)と呼びます。そのうち、Sentinel-2 が撮影した大量のデータは、Amazon S3(Amazon Simple Storage Service)という Amazon のクラウド ストレージに置かれており、Sentiel-2 が撮影したデータを提供する AWS のサービスを Sentinel-2 on AWS と呼びます。ユーザーは Amazon S3 のストレージを経由して衛星画像データをダウンロードできるようになっています。

※冒頭でふれた Landsat(8 号)の衛星画像も Amazon S3 を経由して利用できます。

Amazon 社では Earth on AWS というプロジェクトで膨大な地理空間データを公開しており、衛星画像だけでなく、地形タイル、SpaceNet の機械学習用トレーニングデータ、次世代気象レーダー(NEXRAD)の気象データなど、他にもさまざまな地理空間データを提供しており誰でもアクセスできるようになっています。有償のサービスを使えばこれらの膨大なデータをクラウド上で分析できるため、解析のためにデータをダウンロードしたり、面倒な前処理をしたりする必要がなく、従来に比べてより大規模なプロジェクトをより短期間で実現することも可能です。GIS にかかわりのある者にとっては、とってもロマンのある話ですね。

とはいえ、個人で有償サービスを使うのはちょっと敷居が高いので、今回は Sentinel-2 の衛星画像データをダウンロードして、ArcGIS で読み込むまでの手順をご紹介します。

■ダウンロードしてみよう!

1.まず、必要な場所の衛星画像をダウンロードしましょう。

Sentinel Image browser にアクセスします。

2.検索画面が表示されます。画像を検索する期間と雲量を指定して、画像をダウンロードしたいエリアを表示し、[Submit] ボタンをクリックすると、画像の詳細情報とプレビューが表示され、雲の量や画像取得日時、プロダクトレベルなどを確認できます。

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3.利用したい画像を検索結果欄から選び、リンクボタンをクリックします。

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4.画像のリンクが取得されるので、[AWS path](上のリンク)をクリックします。

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5.赤枠内のデータを適当なフォルダーにダウンロードします。

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6.ArcGIS Pro(もしくは ArcMap)を立ち上げ、ダウンロードしたデータを [プロジェクト] ウィンドウから追加します(ArcMap の場合は [カタログ] ウィンドウから追加してください)。今回はマルチスペクトルバンドを合成するので、B02.jp2 ~ B04.jp2 を追加します。バンド別に追加されているので、このままでは自然な色に見えません。つづいて各バンドをコンポジットしてトゥルーカラーを合成します。

衛星画像

7.[解析] タブの [ラスター関数] ボタンをクリックして、[ラスター関数] ウィンドウを立ち上げます。[データ管理] を展開して、[コンポジット] アイコンをクリックします。

衛星画像

8.[コンポジット プロパティ] の [ラスター] のプルダウン ボタンをクリックして、各バンドを追加します。すべてのバンドを追加して、上から順に B04、B03、B02 となるように並べ替え、[新しいレイヤーの作成] ボタンをクリックします。

衛星画像の読込み

9.[コンテンツ] ウィンドウに「コンポジット」レイヤーが追加され、トゥルーカラーのマルチバンド画像が合成されています。

衛星画像の表示

コンポジットするバンドを変更すれば、さまざまなカラー合成が可能です。また、Basic ライセンスで使えるラスター関数も数多くあります。Sentinel-2 on AWS から画像をダウンロードして、ぜひご活用ください。

※注意

ArcGIS では、対応している衛星について、自動で前処理した画像を使えるラスター プロダクトという機能があり、簡単にマップに衛星画像を追加することができます。Sentinel-2 は ArcGIS 10.4 for Desktop 以降のバージョンで対応していますが、2016 年 12 月に Sentinel-2 のデータに仕様変更があり、残念ながら現時点ではラスター プロダクトを利用できません。

また、Sentinel-2 on AWS のデータについては、データ提供元の利用規約を確認の上ご利用ください。

■関連リンク

ArcGIS for Desktop

ArcGIS Pro

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