ENVI 5.4 から追加されたオプション ライセンスである ENVI Crop Science は、衛星やドローンで撮影された高解像度の画像から作物の数量や健康状態を把握することが可能な、農業に特化したリモートセンシング技術です。
本ブログでは、ArcGIS Pro 上で、Crop Science タスクを実行した例をご紹介します。行った内容は、高解像度画像から樹木のカウントと正規化植生指数(NDVI)による植生状態の把握です。
事前準備
ENVI Py for ArcGIS Pro をインストールし、ArcGIS Pro 上で Crop Science タスクが利用できるように ENVI カスタムツールを作成しておきます。
画像の前処理
使用画像:World View-2 パンクロマティック画像、パンシャープン画像(0.5m 解像度)
・パンクロマティック画像は、対象箇所をマスクしておきます。
・パンシャープン画像から NDVI 画像を作成しておきます。
では、Crop Science タスクを使って画像から樹木をカウントしましょう。
樹木のカウントには、[Count Crop] ツールを使います。
[Count Crop] ツールでは、計測したい樹木や作物などを強調したシングルバンドの画像と対象のサイズ(Min/Max)が必要となります。
ステップ 1
[Enhance Crops] ツールを使ってパンクロマティック画像から強調画像を作成
ステップ 2
強調画像から対象の大きさを計測
ステップ 3
[Count Crops] ツールで樹木のカウント
[Count Crops] ツールは、JSON ファイルを出力します。JSON ファイルは、[Convert Crops to Shapefile] ツールを使ってシェープファイルに変換できます。
結果
誤抽出もありますが、おおよそ樹木のある地点をカウントすることができました。
ステップ 4
次に、カウント結果と NDVI 画像を用いて [Calculate and Rasterize Crop Metrics] ツールを実行します。
[Calculate and Rasterize Crop Metrics] ツールは、カウント結果内における NDVI 値の集計を行うことができます。今回は、カウント内の平均値を算出しました。
[Create Classification Raster] パラメーターをオンにすることで、NDVI 値を相対的に色分け表示した画像を算出することができ、NDVI 値による植生状態をすばやく把握することができます。[Create Classification Raster] パラメーターをオフにすると、各カウント結果内に NDVI の統計値が算出されます。
結果をレイアウトでまとめると、一つのレポートを作成することができました。
[Count Crops] ツールで出力したカウント結果は、作物に大きな変化がなければ使いまわすことが可能です。[Calculate and Rasterize Crop Metrics] ツールで同じカウント結果を利用し、次の週の NDVI 画像で状況を把握するといったモニタリングに用いることができます。
近年、ドローンの普及により衛星画像よりも高頻度で高解像度の画像を取得できるようになってきました。Crop Science は高解像度の画像から作物のサイズやパラメーターを指定するだけで自動的に作物をカウントします。ENVI のディープラーニングモジュールと組み合わせることにより、抽出の精度を上げることも可能です。その結果を ArcGIS Pro で別のデータと組み合わせて分析し、ArcGIS Online で共有することができます。
農業分野におけるリモートセンシングの活用に向けて、ENVI Crop Science を加えてみてはいかがでしょうか。
■関連リンク
・ENVI ノート:ArcGIS Pro で ENVI Crop Science 機能を使おう