経済産業省の「DX レポート~ IT システム「2025 年の崖」の克服と DX の本格的な展開~」によると、レガシーシステムによる課題を克服できない場合、2025 年以降、最大 12 兆円/年の経済損失が生じる可能性があると報告されています。国内企業の IT 関連費用のうち 8 割以上が既存システムの運用・保守に充てられていると述べられており、技術的負債が重荷になっていることがうかがえます。同レポートではレガシーシステムを「老朽化、肥大化、複雑化、ブラックボックス化したシステム」と定義しており、その課題として、たとえば、過剰なカスタマイズがなされていることによる複雑化・ブラックボックス化、既存システムが事業部門ごとに構築されて組織横断的なデータ活用ができていない、といった点をあげています。本ブログでは、これらの課題に対して GIS ソフトウェアの観点から ArcGIS がどのように有効かを紹介します。
過剰なカスタマイズがなされているなどによる複雑化・ブラックボックス化
過剰なカスタマイズを避けるための 1 つの方策としてパッケージソフトウェアの有効活用があげられます。ArcGIS は、ビジュアライゼーション、空間解析、画像処理、3D GIS、リアルタイム GIS、現地調査、データ管理から共有・公開にいたるまで GIS で行いたいことをすべて網羅する豊富な機能群、および汎用アプリケーションを提供します。
もちろん、複雑な業務ではこのような汎用アプリケーションだけでは実現できないことも多くあります。そこで、ArcGIS はプログラミングによる開発を極力少なくしてアプリケーションを構築するための仕組みが多数用意されています。それは例えば、組織の持つデータやユーザーを集約し管理するための ArcGIS Online / ArcGIS Enterprise や、さまざまなクライアントやアプリケーションから利用できる Web マップです。ArcGIS は一般的な GIS よりもミドルウェアによるサポート部分が大きく、各種業務アプリケーション構築のための開発工数をおさえることができます。
既存システムが事業部門ごとに構築されて、組織横断的なデータ活用ができていない
ArcGISプラットフォームは組織内の誰もが地図を利用できる環境を提供します。クライアントはデスクトップ、Web、モバイルを問わず使用でき、どのクライアントからも地図を閲覧し、編集し、分析できます。現地でモバイルにより取得したデータをすぐに事務所からも確認できます。これはデータを一元管理し、組織内の全員が同じ状況認識を持てることを意味します。個別に GIS アプリケーションを構築するのではなく、ArcGIS プラットフォーム上にアプリケーションを構築することで、アプリケーションのサイロ化を防ぎ、システムやデータへの多重投資や整備・開発費用を最小化できます。
組織内のシステムはもちろん GIS だけではありません。ArcGIS はファイル、DBMS、サービス、API といったさまざまな方式で他システムと連携可能です。多様なデータフォーマットに対応しているのでファイルのやりとりによる連携はもちろん、Oracle、SQL Server、PostgreSQL、Db2 といった DBMS を介した連携も可能です。ArcGIS は GIS の標準化に取り組んでいる団体である OGC (Open Geospatial Consortium) が定めた各種標準化仕様にも対応しています。これらの標準規格サービスを介して他のシステムと連携できます。また、地図を表示、操作、分析、管理、共有するためのサービスインターフェイスである ArcGIS REST API を使用した API レベルでの連携も可能です。API レベルでの連携は、独立性が高い各システムの「疎結合」による連携を可能にします。連携するシステム間の依存関係が強く、各システムの独立性が低い「密結合」のシステムを構築すると、システムの一部を変更したことによる影響が多岐にわたるため、テストに時間を要し、保守負担も大きくなります。また、しばらく経つと、サポートできる人員が減ってきてブラックボックスと化し、まさにレガシーシステム化を引き起こすことになりかねません。Esri はオープンビジョンをかかげており、ArcGIS はオープンで柔軟性のある相互運用可能なプラットフォームを提供します。これにより、GIS だけでなく他のシステムともデータ連携が可能となり組織横断的なデータ活用が可能となります。
このように ArcGIS のもつ豊富な機能、汎用アプリケーション、Web サービスベースのアーキテクチャ、相互運用性は、GIS ソフトウェアの観点からレガシーシステムからの脱却を後押しし、組織のデジタルトランスフォーメーションを推進します。
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