設備ネットワークの管理を可能にする ArcGIS Utility Network のご紹介 その3

モバイルで設備の巡視点検

その2では、ArcGIS Utility Network (以下、Utility Network) のコンセプトの中の「設備やその振舞いをより現実に近い形でモデル化」と「ダイナミックなビジュアライゼーション」を紹介しました。今回は「より効率的な編集機能と高度なトレース機能」と「ArcGIS プラットフォームの利用拡大」について説明します。

より効率的な編集機能と高度なトレース機能

データの品質を維持するためのルールの定義

電気、ガス、水道はライフラインであり、管理するデータには高い品質が求められます。たとえば、変圧器に引込線が接続されることや配水管にメーターが接続されることはありえません。このようにデータの整合性を維持するために、Utility Network ではルールを設定できます。以下の図のようにどの設備とどの設備を接続させることができるかを一つ一つ登録できます。ルールに違反したデータは作成できません。接続ルールをプログラム開発せずに設定できるので、メンテナンスも容易になり、設備の種類が増えた際も対応しやすくなります。

設備の属性

編集作業を省力化するためのグループ テンプレート

設備の数や種類が多いと、編集作業の手間も増えます。ArcGIS Pro にはグループ テンプレートという編集作業を効率化するための機能があります。以下の動画では、1 回目のクリックで給水管の始点としてメーターを作図し、2 回目のクリックで給水管の頂点として止水栓を作図し、配水管上でダブルクリックすると給水管の終点として継手が作図される様子を紹介しています。メーター、止水栓、継手、配水管を個別に作成する必要はありません。どの設備をグループ化してテンプレート化するかを設定可能です。

設備ネットワーク上の分析を可能にするトレース

設備が接続性をもって地図上で管理されることで可能になる分析にトレースがあります。トレースにより抽出した設備ネットワークから多くの洞察を得られます。ここでは 2 つの例を紹介します。

以下の動画は電力分野における下流トレースの例を示しています。クリックした電柱から下流にある引込線が選択されます。スイッチを切り替えることによって変わった電気の流れをふまえたトレース結果が得られます。

以下の動画は水道分野における断水解析の例を示しています。断水が起きた場所を指定して処理を実行すると、閉めるべき弁栓や、それにより影響を受けるメーターを特定できます。


Utility Network ではさまざまな種類のトレースと設定可能なパラメータが用意されています。これらを組み合わせることで多様な分析を実行できます。

ArcGIS プラットフォームの利用拡大

ArcGIS プラットフォーム上で設備ネットワークをシームレスに活用

ArcGIS Enterprise 上に設備ネットワークを構築すれば、デスクトップ、Web、モバイル問わず ArcGIS プラットフォーム上のすべてのクライアントで利用できます。本連載でもデスクトップアプリケーションである ArcGIS Pro や、ArcGIS API for JavaScript を使用して作成したアプリケーションを紹介しました。これにより、たとえば、構築した設備ネットワークを直接利用してモバイルで設備の巡視点検をしたり、センサーから取り込んだデータをリアルタイムで取り込み、設備の状態を監視したり、あるいは各設備データに高さのデータを持たせることにより 3 次元で表現したりできます。また、設備ネットワークだけでなく、災害や気象、植生などの外部データを組み合わせることでさまざまな空間分析が可能になります。

モバイルで設備の巡視点検

プラットフォームで設備ネットワークの利用Webで設備の監視

Web サービスベースであることを活かした他システムとの連携

Utility Network は Web サービスベースのアーキテクチャです。構築した設備ネットワークに対する操作は REST API を通して行われます。REST API を利用することにより、EAM (アセットマネジメントシステム) や SCADA (監視制御システム) といった外部システムと疎結合による連携が可能です。これによりシステム全体としての保守性の向上が期待できます。

 

Utility Network は設備ネットワークを管理するための包括的なソリューションを提供します。世界中のお客様やパートナー様の要望を取り入れ、長い年月をかけて開発されてきました。本連載では紹介できなかった機能も多数あり、また、現在もさまざまな機能が追加されています。

その2と本記事で紹介したデモでは、画面インターフェイスは簡単なプログラムを作成していますが、情報モデルを取り扱うバックエンド側はプログラムせずに実装しています。Utility Network 単体で実現できないワークフローは別途用意されている各種 SDK を利用してカスタマイズできます。

※Utility Networkは現時点では国内でのサポートは未対応ですが、本記事をご覧になって本製品に興味を持たれた方はお問い合わせフォームからお問い合わせください。

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