ArcGIS Enterprise 10.9 の国内提供を開始しました。 このリリースでは、製品のさまざまな分野で機能強化や新機能が追加されています。 本ブログでは、まずコンテンツおよびデータの管理、ArcGIS Enterprise ポータルの主要な機能をご紹介します。
このリリースに含まれるすべての機能については、ヘルプドキュメント を参照してください。
コンテンツとデータ管理
分散コラボレーションによる双方向編集の対応
これまで分散コラボレーションによって、レイヤー、マップ、アプリを他の ArcGIS Enterprise 環境や ArcGIS Online 環境と共有し、データやコンテンツへのアクセスを容易にし、新しい共同作業方法を提供してきました。
以前は、レイヤーを所有していた組織のみが編集を同期できましたが、 最新の機能ではデータ更新を組織間において双方向で編集、同期することが可能になりました。 本新機能は、データ管理ワークフローを合理化し、チームがより密接に連携して作業できるようにするために要求されていた機能です。
ArcGIS Enterprise と ArcGIS Online それぞれでフィールド データを収集したり、各種データソースの更新を行ったり、さまざまな目的で使用することが可能です。この機能の詳細については、コラボレーションに関するヘルプ ドキュメントをご参照ください。
グループのエクスポート/インポート更新
ArcGIS Enterprise 10.8.1 では、/export と /import という 2 つの新しい REST API が導入され、開発環境、ステージング環境、本番環境間でコンテンツを簡単に移動できるようになりました。
これにより、グループ内のコンテンツ (レイヤ、マップ、アプリ) をパッケージにエクスポートして、別の ArcGIS Enterprise 環境にインポートすることができます。このプロセスは、REST を介して行うことも、ArcGIS API for Python を使用してスクリプト化することもできます。 最新の機能拡張では、コンテンツを “特定のフォルダ” にインポートすることを選択できるようになり、インポート操作の後にフォルダ移動といった操作が不要となります。環境間での統一性を維持するのに役立ちます。
フィールド レベルの編集設定
フィールド レベルの編集設定では、編集可能なホストされたフィーチャ レイヤーの特定のフィールドの編集を無効にすることができます。 たとえば、市内の商業施設にある緑化した屋根 (植生のある屋根) を含むレイヤーがある場合、レイヤーの編集を有効にして、屋根に関する属性を更新できるようにしたいが、建物の住所などの重要なフィールドは編集できないようにしたい、というようなケースに対して、本機能が有効に作用します。
データのアペンド 機能
新しいデータが追加された場合、既存のホストされたレイヤーにそのデータを追加する必要が出てくることは往々にしてあります。 今回のアップデートでは、データソースの更新に応じて、既存のレイヤーにフィーチャを追加したり、既存のフィーチャを更新したりすることができる「データの追加」機能が実装されました。「データの追加」に対応できるデータ フォーマットは、シェープファイル、CSV、Excel シート、GeoJSON ファイルです。
フィーチャの結合でのビュー レイヤーの対応
データ管理のテーマに沿って、多くのユーザーから「入力レイヤーの更新に合わせて動的に更新される結合レイヤーを作成したい」という要望が寄せられていました。 これを実現するために、フィーチャの結合ツールを実行し、ホストされたフィーチャ レイヤー ビューにその出力を設定することができるようになりました。 ホストされたフィーチャ レイヤー ビューは読み取り専用で、入力レイヤーが変更されると最新のデータを反映して更新されます。
たとえば、商業施設の屋上緑化に関するレイヤーを使用して、フィーチャの結合を実行し、エネルギー使用量のベンチマークを行った年や建設日など、その施設に関するその他の情報を含む別のレイヤーの属性を結合することができます。これにより、物件の特徴をより包括的に理解できるレイヤーを得ることができます。
ベクター タイル レイヤーおよび関連するフィーチャ レイヤーの同時公開、管理
ArcGIS Pro 2.8 では、ベクター タイル レイヤーと関連するフィーチャ レイヤーを同時に公開できるようになりました。 ArcGIS Pro から Web レイヤーを共有する際に、このオプションが表示されるようになりました。
ArcGIS Pro からベクター タイル レイヤーとフィーチャ レイヤーを共有するためのオプションです。 この新しいオプションを使用すると、編集者はフィーチャ レイヤーを新しいフィーチャで更新し、それが完了したら ArcGIS Enterprise ポータルを通じてベクター タイル キャッシュを再構築することができます。これにより、編集内容がベクター タイル キャッシュ レイヤーに反映され、このベクター タイル キャッシュ レイヤーが存在するすべてのマップが最新の状態になります。
ArcGIS Enterprise ポータル
管理レポート
管理レポートは、管理者が環境をよりよく理解し、その情報に基づいて運用できるようにする上で必要となる情報が記載されたレポートです。
Enterprise ポータルの [組織] > [ステータス] > [レポート] では、メンバーとアイテムの 2 種類のレポートが生成できます。
メンバー レポートには、ユーザー名、氏名、電子メール、プロファイルの可視性、ユーザー タイプ、最終ログイン、グループやアイテムの所有権など、組織内のメンバーに関するさまざまな属性がリストアップされます。メンバー レポートでは、次のような質問に答えることができます。
- どのユーザーが今月ログインしたか?
- どのユーザーが最も多くのアイテムを所有しているか?
- 今年は何人の新規ユーザーが追加されたか?
- Creator のユーザー タイプはいくつあるのか?
アイテム レポートには、組織内のすべてのアイテムと、アイテム タイプ、作成日、最終更新日、閲覧数、所有者、共有設定、タグやカテゴリなどの情報が一覧表示されます。アイテム レポートにより、管理者は以下のことを知ることができます。
- どのようなタグが使われているのか。
- このアイテムは何回閲覧されたのか?(さらに、このレポートをスケジュールに沿ってエクスポートすることで、時系列で閲覧数を追跡することができます)
- コンテンツ カテゴリを使用しているアイテムは?
- どのアイテムが共有されていて、共有されていないのか?
- 過去 1 年間に変更されていないアイテムは?
- 同じようなアイテム (タイトルの類似などによる) が存在しているか?
これらは、メンバー レポートやアイテム レポートを使って答えられる多くの質問のほんの一例です。
レポートは、デフォルトの管理者ロールを持つメンバーがエクスポートして CSV にダウンロードし、さらなる分析や他のビジネス システムとの統合を行うことができます。 管理者レポートの詳細については、ヘルプ ドキュメント をご覧ください。
OpenID Connect のサポート
管理者は OpenID Connect のログインを設定して、メンバーが組織の OpenID Connect ベースのログイン システムと同じユーザー名とパスワードを使用して ArcGIS Enterprise にサインインできるようになりました。
多要素認証のサポート
ArcGIS Enterprise のビルド イン アカウントの多要素認証を有効にする機能が実装されました。 このオプションでは、ユーザー名とパスワードに加えて、認証コードを要求することで、サインイン時に追加の認証レベルを提供します。
電子メールの設定方法の変更
前回のリリースでは、ArcGIS Enterprise は組織の SMTP サーバーを連携させ、電子メールを構成することができるようになりました。 これにより、組織のメンバーがパスワードを忘れた場合の一時的なパスワード リセット リンクを送信する必要がある場合や、ポータル ライセンスの有効期限が切れる場合など、さまざまな理由で利用することができるようになりました。
これまで、電子メールの設定はポータルの Admin Directory で構成していましたが、今回のリリースから、ArcGIS Enterprise ポータル内の GUI で直接メールを構成できるようになりました。 また、ポータル マシンのディスク容量が少なくなったときの通知、アイテムにコメントが付いたときの通知、プロファイル設定が更新されたときの通知など、電子メールを使用した新しいワークフローも含まれています。
その他サーバーロールの情報
GeoEvent Server
複雑な GeoEvent サービスのイベント スループット、新しいプロセッサや機能拡張、GeoEvent サービスのデザイナーや GeoEvent Sampler のインターフェイスの改良、および ArcGIS GeoEvent Gateway サービスの回復性の向上が含まれます。詳細は GeoEvent Server の新機能をご覧ください。
Image Server
画像データの管理に役立つ 2 つのパラメーター「コピーの許可」と「解析の許可」が追加されました。ラスター解析では、多くの既存ツールの更新に加えて、距離配分、距離蓄積、最適領域接続などの新しいツールが追加されました。詳細は Image Server の新機能をご覧ください。
お知らせ
ArcMap ベースのランタイムから ArcGIS Pro ベースのランタイムへのサービスの移行
新機能が追加されただけでなく、ArcGIS Enterprise 10.9.x が、ArcMap からのサービスの公開と利用をサポートする最後のリリースとなります。
システム トレンドとして 64bit プロセスの一般化などの背景より、ArcGIS Pro ベースへの移行が行われてきており、今後のサービス利用の継続性を維持していくための、ArcGIS Enterprise においても ArcMap ベースのランタイムを廃止するという案内が出されました。
それに伴い、ArcGIS Enterprise 10.9 のリリースには、サービスのランタイムの移行を支援するツールが含まれています。
- ArcGIS Server Manager での変更: ArcGIS Server Manager では、互換性のあるサービスのランタイムを 1 サービスごと移行することができます。
- UpdateArcMapServices ユーティリティー: このユーティリティーは、ArcGIS Server にインストールされているコマンド ライン ユーティリティーで、互換性のあるサービス ランタイムを分析し、一度に移行することができます。
サービスを手動で移行する際の詳細については、テクニカル ペーパーをご覧ください。
■関連リンク
・ArcGIS Enterprise 製品ページ
・ArcGIS Enterprise 10.9 の新機能—ArcGIS Enterprise | ArcGIS Enterprise のドキュメント