ArcGIS API for Python の最新バージョン 2.4.1 を 2025 年 4 月 7 日 (日本時間 2025 年 4 月 8 日) にリリースしました。本記事ではアップデートされた主な内容をご紹介いたします。
目次
アイテムの依存関係のグラフ
組織内でコンテンツを管理する GIS 管理者やその他のユーザーは、あらゆるアイテム タイプについて、すべてのアイテムの依存関係を知りたいことがよくあります。たとえば、以下のようなことを知りたい場合があるかもしれません。
- Web マップが参照するレイヤー (例 : フィーチャ レイヤー → Web マップ)
- 公開されているレイヤーのソース ファイル (例 : ファイル ジオデータベース → フィーチャ レイヤー)
- Web アプリ内の視覚的なコンポーネント (例 : ArcGIS StoryMaps 内の Web マップ)
- 他のアイテムへの添付ファイル (例 : ArcGIS Survey123 アプリの Microsoft Word テンプレート)
apps モジュールの新しい itemgraph サブモジュールには、組織のアイテムの依存関係のグラフを構築するためのクラスと関数が用意されています。依存関係のグラフを使用すると、ArcGIS Online または ArcGIS Enterprise の組織でアイテムが互いにどのように関連しているかを調べることができます。
たとえば、GIS 管理者が組織のアイテムを別のポータルに移行する仕事を任されたとします。ArcGIS Enterprise から ArcGIS Online への移行、または開発環境から本番環境への移行です。移行する前に、複雑なアプリを含むすべてのアイテムが正しく描画され、データ ソースが欠落していないことを確認したいと思いますが、手動でクリックして 1 つ 1 つ確認するのは面倒です。どのようにすれば、より効率的に不足しているものを見つけることができるでしょうか。以下はそのおおまかな手順です。
- 依存関係のグラフの作成
- 既存のアイテムまたはアクセス可能なアイテムに対応しないアイテム ID (既に存在しないアイテム、壊れているアイテム、組織からアクセスできないアイテム) の特定
- オプションで依存関係のグラフを可視化
- 問題のあるアイテム ID を正しい ID に置換 (Python API のバージョン2.4.0 で追加された remap_data メソッドで実現可能)
オフラインでのクローン / バックアップの作成
アイテム依存関係のグラフと remap_data メソッドを使用してコンテンツの移行準備を行った後、コンテンツのバックアップを作成したいと思うかもしれません。新しい OfflineContentManager クラスを使用すると、アイテムとその依存関係を保存した状態を作成することができます。このクラスには、アイテムのリスト、アイテムのエクスポート、アイテムのインポートのメソッドがあります。この新しいクラスやメソッドは、移行後にコンテンツが壊れてしまうのを未然に防ぐ方法を提供します。
この機能はコンテンツのバックアップに加え、切断された環境でコンテンツの移行/クローンを行う組織にとっても有用です。
GDALによるSpatially Enabled DataFrame (SeDF) のサポート
Spatially Enabled DataFrame (SeDF) を使用すると、ArcGIS のデータ (フィーチャ レイヤー、ファイル ジオデータベース フィーチャクラス、シェープファイル、GeoJSON など) を Pandas DataFrame 間で簡単に相互変換できるため、ArcGIS と Python データ サイエンス エコシステム間の強力なブリッジとなります。
裏側では、SeDF は「ジオメトリー エンジン」という概念を使用して、地理空間データを異なるフォーマット間で変換する際に、そのジオメトリーを処理して理解します。デフォルトでは、ArcPy が利用可能な場合 (ArcPy を使用できるライセンスを持っている場合など)、SeDF はジオメトリー エンジンとして ArcPy を使用します。ジオメトリー エンジンとして ArcPy を使用する最大の利点は、ファイル ジオデータベースに書き込めることですが、ArcGIS システムとの完全な互換性やジオプロセシング フレームワークの使用など、他にも多くの利点があります。
ここでの問題点は、Mac や Linux で ArcGIS API for Python を使用している場合 (または ArcPy にアクセスできない場合)、ファイル ジオデータベースを読み取り / 書き込みすることができませんでした。
バージョン 2.4.1 のリリースでは、新しく GDAL を SeDF の読み取り / 書き込み機能に組み込みました。GDAL とは Geospatial Data Abstraction Library の略で、さまざまなラスターおよびベクターの地理空間データ形式を読み取り / 書き込みができるオープンソースのライブラリーです。Windows のArcGIS Pro や ArcGIS Notebook ランタイムの標準環境に既に含まれているほか、Python のパッケージ マネージャーである conda や pip を介してインストールすることもできます。これにより、Mac や Linux 上でファイル ジオデータベースを SeDF に簡単に読み取り / 書き込みができるようになり、Python API を使用する OS に関係なく、より一貫したデータ I/O エクスペリエンスが得られるようになりました。
スクリプトの先頭で処理環境を設定し、ジオメトリー エンジンを選択し、arcgis やその他必要な Python ライブラリーをインポートすることで利用できます。
対応プラットフォームの更新
- Python のバージョン
- 3.10 ~ 3.12 (主にバージョン 3.11 をサポート、セカンダリー サポートとしてバージョン 3.10 と 3.12)
- Esri 製品とそのバージョン
- ArcGIS Pro 3.5※ 以上のデフォルト環境とクローン環境
- ArcGIS Online 2025 年 6 月アップデート
- ArcGIS Enterprise 11.4 以上 (11.5※ 以上は ノートブック ランタイムに含まれる)
- スタンドアロンの conda と Python 環境
※ ArcGIS Pro 3.5 は 2025 年夏頃リリース予定、ArcGIS Enterprise 11.5 は 2025 年上半期にリリース予定です。
本記事でご紹介したアップデートの他にも機能の更新や不具合の修正等が行われています。新機能や不具合修正等の詳細は、「リリース ノート」をご参照ください。
関連リンク
ESRIジャパン Web サイト:
米国 Esri 社 Web サイト:
米国 Esri 社 ArcGIS Blog: