ArcGIS 上ですぐに使える!防災・BCP に役立つGISコンテンツ

近年、災害の激甚化・頻発化が進む中、組織にとって GIS を活用した防災・減災の備えは、ますます重要性を増しています。災害が発生していない「平常時」には、ハザードマップなどのデータを活用して、防災計画や BCP (事業継続計画) を策定します。また、災害発生前後の「予測・対応」フェーズでは、リアルタイムな気象情報や被害状況を地図上で可視化することで、迅速かつ的確な意思決定と対応が可能になります。

ArcGIS には、防災・BCPに役立つ、有償・無償のGISコンテンツが多数用意されており、すぐに活用することが可能です。ここでは、それらの GIS コンテンツについてご紹介します。

平常時に役立つGISコンテンツ

河川氾濫リスク

洪水浸水想定区域(解析用)

想定し得る最大規模の降雨によって河川が氾濫した場合に、浸水が想定される区域を提供するデータです。本サービスには、計画規模(10~100年に1回程度の降雨規模を想定)、想定最大規模(1000年に1 回程度の降雨規模を想定)の浸水想定、浸水継続時間、家屋倒壊氾濫の 4 つのレイヤーが含まれます。河川ごとの洪水浸水想定が重なる箇所は、浸水深レベルが高い方を優先しているデータです。

多段階浸水想定(国土数値情報 令和6年度)

高頻度から中頻度で発生する降雨規模(年超過確率:1/10、1/30、1/50、1/100 を標準とし、河川整備の計画規模に応じて 1/150または1/200 を追加)ごとに作成された浸水想定データです。水系および降雨規模ごとに想定される浸水深を提供します。

内水氾濫リスク

雨水出水(内水)浸水想定区域(国土数値情報 令和6年)

内水氾濫とは、都市部などにおいて下水道の排水能力を超える雨水が地表に溢れ、浸水が発生する現象を指します。本データは、各地方自治体から提供された情報をもとに、雨水出水(内水)による浸水域を浸水深の区分ごとに整備したデータです。

土砂災害リスク

土砂災害警戒区域(国土数値情報 令和 6 年)

土砂災害防止法に基づいて指定される区域で、土砂災害(土石流・地すべり・急傾斜地の崩壊)が発生した場合に、住民に危害が生ずるおそれがあると認められる区域です(土砂災害警戒区域 = (イエローゾーン))。建築物の損壊が生じ住民等の生命又は身体に著しい危害が生ずるおそれがあると認められる区域は、土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)に指定されます。

類似のデータとして、急傾斜地崩壊危険区域(国土数値情報)地すべり防止区域(国土数値情報)も ArcGIS 上ですぐに利用することが可能です。これらは土砂災害警戒区域と異なり、急傾斜地法や地すべり等防止法に基づく区域であり、ハード面での対策を法的に支える枠組みとなっています。(参考:110803_shiryo2.pdf

津波浸水リスク

津波浸水想定(国土数値情報)

都道府県から提供された津波浸水想定データを、想定する津波の浸水域と最大浸水深の区分ごとのポリゴン(面)データとして整備したデータです。

高潮浸水リスク

高潮浸水想定区域(国土数値情報 令和 6 年)

都道府県から提供された高潮浸水想定区域データを、想定する高潮の浸水域と浸水深の区分ごとのポリゴン(面)データとして都道府県別に整備したデータです。

地震の被害想定

想定される巨大地震をシナリオ別に、想定震度や液状化危険度、津波浸水深を GIS データ化し、ESRIジャパンが公開したデータです。

ESRIジャパンでは、上記のデータのうち、オープンデータとして利用可能なもののみを使用し、全国シームレスに加工した上で公開を行っています。詳しくは各アイテムの詳細ページをご確認ください。

災害発生前後に役立つ GIS コンテンツ

気象・地震

気象オンライン サービス (ゲヒルン版) (有償)

気象庁による各種防災気象情報をゲヒルン株式会社から提供を受け、可視化・解析等で利用可能なフィーチャレイヤー形式で配信するサービスです。降水、浸水害、河川氾濫、土砂災害、気象警報、台風、地震のデータがあります。拡張レイヤーとして雷情報のサービスも提供開始しております。以下のような活用シーンで利用されています。

災害リスクのリアルタイム把握・通知

リアルタイム防災気象情報と拠点情報を地図上で重ね合わせることで、災害リスクが高まっているエリアを特定し、リスクの高い拠点に対してアラート通知を行うことで、被害の最小化を図ります。

サプライチェーンの被災状況の把握

災害発生後に、サプライヤーの被災状況の確認に時間を要し、事業への影響把握が遅れるという課題があります。これに対し、災害リスクと拠点の位置情報をもとに分析することで、被災状況を迅速に把握し、事業への影響を最小限に抑えることが可能となります。

管理物件の被災状況の把握

地震発生後、管理物件や取引先の被災状況を確認するために、推計震度分布と物件情報を位置情報に基づいて紐づけし、震度ごとにリスト化を行います。この情報は、被災状況を確認における優先順位付けなどに活用され、迅速かつ効率的な対応を可能にします。

震源震度情報(防災情報 XML)

気象庁防災情報 XML(PULL 型)の「震源・震度に関する情報」に基づき、最近の地震情報のうち震源情報および市町村別の震度情報を ESRIジャパンが可視化したフィーチャ レイヤーです。約 5 分ごとに更新を行っており、過去約 1 ヶ月分のデータを保持しています。eventId フィールドで、震源情報と震度情報を紐付けられます。

なお、防災情報 XML は気象庁の留意事項で「迅速・確実な電文の配信や、気象情報のコンサルティング等を希望される場合は、一般財団法人気象業務支援センターや予報業務許可事業者等にお問い合わせください。」との記述があるように、配信保証がございません。迅速かつ確実な情報配信が必要な場合や、観測地点ごとの震度や 250m メッシュ単位で震度を推計した推計震度分布図が必要な場合は、気象オンラインサービス(ゲヒルン版)の有償サービスのご利用をご検討ください。

アメダス(最新観測値履歴観測値

日本全国で気象観測を行っている気象庁のアメダス観測所の観測値をリアルタイムに提供するデータです。最新観測値を保持したレイヤーは 10 分間隔、過去 1 週間分の履歴観測値を保持したレイヤーは 1 時間間隔でデータが更新されます。

熱中症危険度

環境省が運営する「熱中症予防情報サイト」にて発信している暑さ指数(WBGT)の予測値および「熱中症警戒アラート」・「熱中症特別警戒アラート」の発表情報等をESRIジャパンで加工して、提供するレイヤーです。

道路通行

道路交通オンラインサービス (有償)

トヨタ自動車株式会社のコネクティッドカーから得られるカープローブデータをもとに、各道路の通行実績情報・通行量・渋滞度通行情報を配信するサービスです。災害時のリアルタイムな道路通行状況の把握や、物流業務やビジネス分野など、さまざまな用途で活用可能です。

ライフライン情報

ライフライン情報オンラインサービス (有償)

株式会社レスキューナウの危機管理情報センターが 24 時間・365 日有人体制で収集し提供する停電・断水・ガス供給停止などの情報を、ArcGIS で可視化・解析等で利用可能なフィーチャレイヤー形式で配信するサービスです。リアルタイムなデータに加え、過去 1 カ月間における、毎正時の障害発生状況であるアーカイブデータも併せて提供するため、災害発生後の振り返り分析にも活用できます。

コンテンツの利用方法

無償で利用可能なデータは ArcGIS Online 上の優良コンテンツを集約した ArcGIS Living Atlas of the World 上で公開しています。ArcGIS Living Atlas of the World 上のコンテンツの利用方法は「ArcGIS Online の Living Atlas を利用する」のブログ記事をご参照ください。

また、有償サービスであるESRIジャパン データコンテンツ Online Suite を利用する場合は、別途契約が必要になります。他にも多様なオンライン コンテンツをご用意していますので、気になる方は是非チェックしてみてください。

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