目次
はじめに
夏休みシーズンを迎え、全国各地で人や車の移動が増えています。それに伴い、交通安全への意識を高めることがますます重要になっています。
交通事故の傾向を把握することは、安全対策を考えるうえで欠かせませんが、数万件に及ぶ事故データから、その傾向を読み取るのは容易ではありません。
そこで活躍するのがカレンダー ヒート チャートです。事故データをカレンダー上に可視化することで、「いつ事故が多いのか」をひと目で把握できます。
今回の記事では、ArcGIS Online の Map Viewer のカレンダー ヒート チャートを活用して、日本における交通事故の発生傾向について分析する方法を紹介します。分析には、警察庁が公開している「交通事故統計情報のオープンデータ」をもとに、ArcGIS Living Atlas of the World (以降、Living Atlas) で公開している「交通事故箇所 (2024)」を利用します。
カレンダー ヒート チャートとは
カレンダー ヒート チャートとは、日時情報を持つデータをカレンダー上に集約し、可視化するチャートです。「7 月 15 日」のような特定の日付のデータを集約し可視化できる「年間ビュー」と、「水曜日の 12 時」のような特定の曜日と時刻のデータを集約し可視化できる「週間ビュー」があります。同じ属性を持つデータの件数で色分けされて各グリッドに表示されるため、時間的な傾向を視覚的にとらえることができます。
カレンダー ヒート チャートの利用方法
作成手順
- ArcGIS Online にサインインします。
- Map Viewer 上で [追加] → [レイヤーの参照] をクリックし、[レイヤーの参照] ウィンドウを開きます。
- [マイ コンテンツ] を [Living Atlas] に変更し、検索バーで「交通事故箇所」と検索します。最新データである「交通事故箇所 (2024)」を追加します。
- [チャートの構成] から [チャートの追加] をクリックし、[カレンダー ヒート チャート] をクリックします。
- [データ] タブの [日付] を「事故発生日時」に設定します。
- 次に [カレンダータイプ] を設定します。[1 ~ 12 月と1 ~ 31 日] に設定すると、年間ビューが表示され、月と日ごとの傾向を見ることができます。行が「月」、列が「日」のビューで、複数年にわたって集約されたチャートを表示します。
週間ビューにする場合は、[カレンダータイプ] を [日曜日~土曜日と 0 ~ 23 時] にします。曜日や時間ごとの傾向を見ることができます。行が「曜日」、列が「時刻」のビューで、複数週にわたって集約されたチャートを表示します。
- [集約] でレコードの集約方法を指定します。集約方法は、総数 (デフォルト) のほか、合計、平均、中央値、最小、最大が利用できます。
- [数値フィールド] で集計対象となる数値データを選択します。数値フィールドを指定しない場合は、「その日時に発生した」レコード数で計算されます。
- [方法] でクラス分けの方法を指定します。以下の方法が利用できます。
- 自然分類: データの分布や値のまとまりを考慮し、類似した値が同じクラスになるように分類します
- 等間隔: 最小値から最大値までの範囲を同じ幅で区切って分類します
- 等量: 各クラスに入るデータ数が同じになるように分類します
- [クラス数] を設定します。データをどの粒度で分類するかに応じて、1 ~ 10の幅で値を設定します。
- [配色] を設定します。チャートで使用する色を変更することができます。
[形式] タブでは、タイトルやテキストのフォントや色を設定でき、[一般] タブでは、実際に表示するタイトルの表示有無や文字を設定できます。
使いこなすには
本データには全国の交通事故発生地点のデータが含まれているため、例えば東京都のみを対象としてチャートを作成したい場合は、あらかじめフィルターで東京都に絞り込むことで作成することが可能です。
また、チャートのグリッドをクリックして選択状態にすると、マップ上の対応するフィーチャも連動して選択状態 (青線でハイライト表示された状態) になります。
複数のグリッドを選択することも可能で、例えば一番色が濃く表示されている平日 8 時台の事故はどこで発生しているかをマップ上で把握することができます。これにより、朝に事故が多いスポットや道路、またどのような種類の事故が起きているかなどを一目で見ることができます。
カレンダー ヒート チャートからわかる様々な傾向
実際に「交通事故箇所(2024)」のデータを利用して、カレンダー ヒート チャートからどのような傾向を読み取れるか見てみましょう。
曜日と時間ごとの事故の傾向
平日は朝と夕方 (7 ~ 9 時、17 ~ 19 時の時間帯)、休日は日中帯 (9 ~ 18 時) に事故が多く発生していることがわかります。
平日は主に通勤通学、帰宅の時間帯、休日は外出の多い時間帯であるため、その時間帯に事故が増加している傾向にあります。
月と日ごとの事故の傾向
全体的に大きな傾向はみられませんが、土日や祝日の事故件数は意外にも少ないことがわかります。そのため、前述のとおり平日の通勤通学、帰宅の際に事故につながっている可能性が高いと考えられます。
※わかりやすく土日祝日を青枠で囲っています。
高齢者 (65 歳以上) が関係する事故の傾向
8 時から 18 時までの日中帯の時間に多く、土日を含め特に午前中に事故が多いことがわかります。
高齢者の方が買い物、運動などで外出していることが多い、午前中から日中帯の時間に多く発生している傾向があります。
1 人当たりの自動車保有台数の違いによる事故の傾向
一般社団法人自動車検査登録情報協会の「都道府県別の自家用乗用車の普及状況(軽自動車を含む)」によると、1 人当たりの自動車保有台数が最も多いのは群馬県 (0.727 台/人)、最も少ないのは東京都 (0.222 台/人) です。それぞれを比較してみましょう。
東京都・群馬県ともに、平日 7 ~ 9 時、16 ~ 18 時に濃い色が示されており、通勤通学、帰宅時間に伴い交通事故が集中していることがわかります。
また、事故件数が異なるため、色による単純な比較はできませんが、東京都では 6 時から 22 時にかけて満遍なく色がついています。一方で、群馬県は朝と夕方のピーク時と日中帯との濃淡がはっきりしています。このような違いから、東京都ではピーク時間だけではなく週末を含めた日中帯にも比較的事故が多く、群馬県は通勤通学、帰宅時間に集中して事故が多い傾向があります。
<東京都>
<群馬県>
自転車が関係する事故の傾向
平日の通勤通学時間帯である 7 ~ 9 時、帰宅時間帯である 16 ~ 19 時に事故が多く発生しており、特に学校や会社へ急ぐことも多い時間帯に事故が多いと考えられます。
歩行者が関係する事故の傾向
夕方の暗くなってくる時間帯 (17 ~ 19 時)、特に日の入りが早い11 月~ 2 月 (日の入りが16 時台の時期) に事故が多いことがわかります。
薄暗くなってきて、ライトをつけないと視界が悪い時間に特に多い傾向があります。
夏 (6 ~ 8 月)と冬 (12 ~ 2 月) の時間ごとの事故の傾向
冬は 7 時台や 18 時台の事故が多く、夏は週末の日中帯の事故が多いことがわかります。
暗くなると、視界が悪化したり、速度感覚の低下に伴い速度が上がりやすくなったりする傾向があります。冬は日照時間が短く、移動の多い通勤時間帯が薄暗いため事故数が増えていると考えられます。また、夏休み等がある夏の時期は週末に外出をする機会も多いことから、通勤通学、帰宅時間のほかに日中帯の事故も多いと考えられます。
<夏 (6 ~ 8 月)>
<冬 (12 ~ 2 月)>
おわりに
本記事では、ArcGIS Online におけるカレンダー ヒート チャートの機能と活用例について紹介しました。今回は交通事故の発生について取り上げましたが、ArcGIS ではマップ上で「どこで」事故が発生したのかを把握し、カレンダー ヒート チャートで「いつ」発生したのかを把握することができます。時間ベースのデータを可視化し、様々な課題へアプローチするためにカレンダー ヒート チャートを使用してみてはいかがでしょうか。

