ArcGIS Enterprise で構築する Web GIS

5/10 にリリースされました ArcGIS 10.5 では、先日投稿しました「ArcGIS 10.5 をリリースしました!」の記事でもご紹介したとおり、いくつかの製品で名称の変更がありました。

特に従来「ArcGIS for Server」と呼ばれていた製品は、バージョン 10.5 からは「ArcGIS Enterprise」と大きく名称を変え、近年注目されているビッグデータへの対応を始めとした様々な機能拡張が行われています。

バージョン 10.5 のリリース記事では、新機能に焦点を当ててご紹介しましたが、ArcGIS 10.4.1 for Server 以前から用意されていた製品に含まれていたソフトウェアも、「コンポーネント」として明確に分けられ、それぞれの Web GIS 内での連携が捉えやすくなりました。

そこで今回の記事では、ArcGIS Enterprise に含まれるコンポーネントをあらためて確認し、どのように Web GIS を構築できるのかをご紹介します。

Esri の提唱する Web GIS

まずは Esri の提唱する Web GIS について、どのようなものなのか簡単にご紹介します。

ArcGIS に限らず、現在は様々なデバイスで GIS の機能を利用することができるほか、GIS に活用できるデータもいたるところに散らばっています。

GIS を利用できる環境が広がっていくこと、様々なデータが活用できるようになることはもちろん素敵なことですが、それぞれ増える一方ではいずれ収集がつかなくなってしまうでしょう。

そこで生まれたのが Esri の提唱する Web GIS です。

Esri の提唱する Web GIS では、「GIS のポータル サイト」を用意し、そこに組織の持つデータやユーザーを集約し、管理するシステムを構築します。GIS の利用に必要なすべての情報がポータル サイトに集約されていますので、インターネットを通じてサイトにアクセスすることができるすべてのデバイスで GIS の機能を利用でき、時間、場所を問わず GIS を活用する環境を作り上げることができるようになります。

つまり、GIS のポータル サイトを用意することが Web GIS の第一歩であり、ご紹介する ArcGIS Enterprise を使って構築することができます。

また、Web GIS を語る上で欠かすことのできないもうひとつの要素が Web マップです。Web マップはポータル サイトで作成したマップのことで、ArcMap で使われるマップ ドキュメント(*.mxd)のポータル サイト版をイメージしていただくと分かりやすいかもしれません。ポータル サイトでは Web マップという形式でマップのフォーマットが決められているため、様々なデバイスから、また様々なアプリケーションから作成したマップを利用することができます。

ArcGIS Online と ArcGIS Enterprise

「GIS のポータル サイトを用意することが Web GIS の第一歩」と説明しましたが、同じようにポータル サイトを用意できる製品として、ArcGIS Online があります。

ArcGIS Enterprise と ArcGIS Online とで、実はそれぞれの製品に大きな差はなく、構築できるポータル サイトの見た目もほとんど変わりません。

ArcGIS Online は Esri の提供するクラウド サービスですので、ポータル サイトの構築の手間や、運用保守のリソースも必要としませんし、世界中のユーザーが公開しているデータを簡単に利用することができます。

対して、ArcGIS Enterprise はオンプレミス、もしくはクラウド上にポータル サイトを構築することができるという違いがありますが、その作業や運用保守にリソースを割く必要が出てきます。その分、外部に公開できないデータも、セキュリティ面を気にすることなく利用できるほか、ArcGIS Online ではできない様々な拡張が行える、などといった点が ArcGIS Enterprise の強みです。

ArcGIS Enterprise の 4 つのコンポーネント

ArcGIS Enterprise には全部で 4 つのコンポーネントが用意されています。それぞれ Web GIS の構築に欠かすことのできない要素なのですが、まずはそれらコンポーネントの機能を簡単に解説します。

・Portal for ArcGIS

Web 上のビューアー(マップ ビューアー)やユーザーごとのページといった、ポータル サイトの UI を用意できるコンポーネントです。また、サイトに所属するユーザー設定や、共有されたアイテムの管理など、サイト全体のセキュリティ設定の管理も担っています。

・ArcGIS Server

クライアントからのリクエストに応じた、地図の描画や解析など、GIS の処理を行う、Web GIS の GIS エンジンの役割を担うコンポーネントです。このコンポーネント単体でも、マップの配信や解析を行うことができますが、Portal for ArcGIS と統合(フェデレート)することで、より強力な Web GIS のポータル サイトを構築となります。

・ArcGIS Web Adaptor

組織の Web サーバーに配置するコンポーネントで、ポータル サイトの入口を用意するために使われます。このコンポーネントによって、Web サーバー経由の ArcGIS Server へのアクセスが可能になりますので、Web サーバー側の認証プロセスを ArcGIS Server に組み込むことができるようになります。また、ただポータル サイトの入口を用意するだけでなく、複数台で構成された ArcGIS Server 間のロード バランサーの役割も担っています。

・ArcGIS Data Store

公開されるホスト フィーチャ レイヤー、ホスト タイル レイヤーのデータを格納するためのコンポーネントです。また、3 次元データのサービスであるシーン サービスのキャッシュを格納する場合にも使用されます。

ArcGIS Enterprise で構築する Web GIS

これまで説明してきた 4 つのコンポーネントの役割を踏まえて、ArcGIS Enterprise で構築する Web GIS システムの構成は以下の画像のようになります。

4 つのコンポーネントそれぞれの役回りが分かったあとで、あらためて全体像を見渡してみると、それぞれが常に連携を保ちつつ、ポータル サイトとして機能しているイメージが湧きやすくなったのではないかと思います。

ポータル サイトが構築できると、Web マップをベースとした運用に切り替わりますので、ArcGIS Pro をより活用しやすくなる点も、GIS の活用範囲が広がるという点で見逃せないポイントです。

Web GIS は ArcGIS Online だけでなく ArcGIS Enterprise でも実現できます。要件に合わせて、適切なものを選択しましょう。

■関連リンク

ArcGIS Enterprise
 -Portal for ArcGIS
 -ArcGIS Server
 -ArcGIS Web Adaptor
 -ArcGIS Data Store

ArcGIS Online

GIS 基礎解説 – Web GIS

GIS 基礎解説 – Web マップ

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