2021 年 7 月 19 日から 8 月 9 日までの間と 8 月 24 日から 9 月 5 日までの間で、首都高速道路を利用するマイカー利用の乗用車や軽自動車、二輪車の通行料金が日中の時間帯を中心に1,000 円上乗せされることは、皆様もニュースを見てご存じのことと思います。
また、その影響により「一般道が大渋滞」といったニュースを目にした方も多いと思いますが、果たしてどれくらい通行量に変化があったのでしょうか?ESRIジャパン データコンテンツ Online Suite 道路交通オンラインサービス (以下、Online Suite 道路交通オンラインサービス) のデータソースである、トヨタ自動車株式会社のコネクテッドカー (収集対象は主にマイカーの乗用車) から得られるカープローブデータを用いて可視化・分析を行ってみました。
まずは、料金上乗せの範囲を地図上に可視化してみましょう。たとえば、ETC 搭載車両の料金上乗せ範囲は以下の通りになります。なお、詳細は首都高ドライバーズサイトをご確認ください。
通行量の変化を抽出
通行量を比較する対象として、料金上乗せが開始された 7 月 19 日 (月) のデータと 1 週間前の 7 月 12 日 (月) のデータを整備し、ArcGIS Dashboards を用いて可視化・傾向の把握を行います。
マップ上の色分けは道路ごとに 8 時~ 11 時の通行量の増減を表しており、赤色ほど通行量が増加、青色ほど通行量が減少していることを表します。また、右側のインジケーターはマップに表示されている範囲の同時間帯の通行量 (台数) を道路種別ごとに合算して表示しています。上段は 7 月 19 日の通行量、下段は 7 月 12 日の通行量です。東京周辺では、全体の通行量はいずれの日付も約 220 万台と変化ありませんが、高速・都市高速の通行量が約 10% 減少していることが分かります。その一方、国道や主要地方道の通行量は若干増加していることが分かります。
料金上乗せエリアの比較
料金が上乗せされた首都高の通行量を比較すると、より顕著な傾向を把握することができます。全体の通行量は大きな変化がありませんが、高速・都市高速の通行量は約 20% 減少し、マップで表示しても全体的に青色になっていることが分かります。一方、国道や主要地方道は 5% ほど増加しており、マップも全体的に赤色が多くなっていることが分かります。
少し場所を限定して分析してみましょう。東名高速道路と首都高の間は、用賀料金所を境として首都高を利用すると料金が上乗せされるのですが、料金所の西側 (左側: 東名高速道路側) は通行量が増えているにもかかわらず、料金所の東側 (右側: 首都高側) は減少傾向にあることが分かります。
では、東名高速道路を利用した車両はどの道路を使用したのでしょうか?上の図は、高速・都市高速のみを表示していますが、ここに国道や主要地方道を表示してみましょう。
東京 IC に接続する環状八号線が上下線ともに通行量が増加しており、東名高速道路を利用する車両が首都高を迂回していることが分かります。さらに、国道 246 号線の下り線も通行量が多くなっていることから、首都高を利用せずに直接東名高速道路を目指した車両も普段と比較して多くなっていたことが把握できます。
ArcGIS Dashboards では、選択したフィーチャのみに絞り込むことも簡単に行えます。この機能を利用して、環状八号線と国道 246 号線の交差する道路の通行量 (台数) を計測してみると約 20% 増えていたことが分かります。
このようにプローブデータから得られたデータを用いることで、「どこで」「どれくらい」通行量が増減したのかを定量的に把握できるようになります。さらに GIS を用いたさまざまな分析に利用することができます (たとえば、面的に集計してマクロ傾向を把握したり、ルート解析のバリアとして利用したりできます)。
今回は料金上乗せが開始された直後の 8 時~ 11 時に着目して分析を行いましたが、データ自体は 1 時間ごとに取得できているため、より時間粒度を細かくして分析を行うことができます。さらに、通行量だけでなく通行速度もデータとして取得できるため、合わせて分析を行うと、より精緻な分析が可能になるかもしれません。現在 Online Suite 道路交通オンラインサービスは、リアルタイムな通行実績情報を配信していますが、今後、通行量や通行速度が分かるサービスをリアルタイムに提供できるように計画を進めています。計画を実現できるよう、今後ともどうぞご期待ください。
■関連リンク