世界のエネルギー転換には明るい未来がある一方で、手ごわい課題もあります。
再生可能エネルギーは 2025 年までに石炭を上回る世界最大の供給源になると予想されており、多くの場所でグリーンエネルギーは石油、石炭、ガスよりも安くなっています。
例えば、テキサス州のハイプレインズ地域にある風力発電所は、900 万世帯分の電力をまかなうことができ他の地域よりも安価です。
しかし、テキサス州のタービンの多くは送電網が十分でなく生産を制限するために停止しなければならないのです。
今日の送電網は、少数の集中型発電所に対応するように設計されており、地理的に多様化する再生可能エネルギー・プロジェクトには対応していません。
その結果、送電網への接続を望む風力発電事業者は、系統運用者が必要な送電網の更新を検討する間、平均 5 年程度待つことになっています。
発電や送電を含む新規プロジェクトの開発を加速させるため、クリーン・エネルギーの首脳たちは地理情報システム(GIS)技術に注目しています。GIS が基盤のスマートマップは、送電網に接続する可能性のある場所を発電事業者が特定することに貢献し、新たな送電容量を必要とする可能性のある風力発電所を送電網運営者が追跡するのに貢献しています。
ネクステラ・エナジー社およびその先のクリーンエネルギーの基礎を築く立地インサイト
今日の風力発電プロジェクトでは、ロケーション インテリジェンスが不可欠です。意思決定者は GIS 分析を使って市場や有利な投資先を見つけ、プロジェクトマネージャーは地図を調査して土地の利用可能性や構成を評価します。
需要の掘り起こしに重点を置くこの業界において、GIS は洞察から行動に移すまでの時間を短縮します。
世界最大の風力・太陽光発電メーカーであるネクステラ・エナジー社では、この GIS テクノロジーは活動の中枢となっています。ネクステラ・エナジーの開発担当副社長であるケビン・ギルデア氏は、「私たちは 49 の州とカナダに拠点を持ち、複数のチームが GIS を使用しています。そのため、複数の情報源を統合するプラットフォームを持つことで、透明性を高め、全員が最新のデータに基づいてより良い意思決定を下すことができるのです。」と語っています。
一方、フィングリッドのような送電網事業者は、新しいエネルギー源を受け入れるための拡張を計画するために GIS を採用しています。
「生産と消費をつなぐ需要はどこにあるか?そして計画されたプロジェクトを実現するための送電網の要件は何か?ということを理解することは重要です」と、フィンランドの送電網運営会社で送電網サービスのスペシャリストを務めるアリ・トゥオノネンは話します。
フィングリッドのカスタマー・マネージャーは、クリーンエネルギー生産者と面談する際、地図を使ってシステムの接続容量を視覚化しています。データが豊富な運用状況を把握することで、プランナーは混みあう地域を避け、再生可能エネルギー生産がより迅速に接続できる場所を選ぶことができるのです。
米国とヨーロッパが野心的なクリーンエネルギー目標を達成するためには、エネルギー生産者と送電事業者の協力が鍵となります。ネクステラ・エナジー社の GIS 部門責任者であるアンドリュー・ノリスは、
「地理は、私たち全員が活用できる素晴らしい共通言語だと私は確信しています。テーブルの上やスクリーンの上に地図を置けば、誰もが何を話しているのか理解できます。」と話します。
急速な変化を遂げる風力エネルギー産業
ギルデアがネクステラ・エナジーに入社した 2007 年当時、利用可能な土地の追跡はまだアナログな作業でした。ギルデアは緑色の蛍光ペンで土地の権利関係を地図帳に記録していたのです。
現在では、土地管理から市場分析、運営・保守に至るまで、ネクステラ・エナジー社の開発プロセスのほぼすべての段階でデジタル地図が役立っています。用地選定の段階では、GIS によって意思決定者は高圧送電線が利用可能な地域の風速を確認することができます。また人口密度、土地利用規制、傾斜地など、立地の影響を受けやすい要素に関するデータも地図上で確認することができます。
「新しいプロジェクトを建設する際、これらの洞察は、私たちが賢い投資をするのに役立つリアルタイムの情報を提供します。開発プロセスを継続的に改善し、プロジェクトの信頼性と持続可能性を高め、顧客や地域社会とより良い関係を築くことができます」とギルデアは話します。
立地に関する洞察は地域社会とのコミュニケーションも促進します。開発が進むにつれて、プロジェクト・プランナーは iPad ベースの地図を通じて土地所有者とコミュニケーションをとり、たとえば計画中のサービス・ロードが農作物へのアクセスを損なわないことを示すことができるのです。土地の権利が確保されると、GIS が基盤のダッシュボードが気象データと環境アセスメントで建設プロセスを支えます。
ネクステラ・エナジー社では、リスク管理には単一の運用ビューが不可欠でありハリケーンなどの気候の脅威や潜在的な緩和策をチームに警告しています。
「このような取り組みを通じて、風力発電事業者はグリッドオペレーターとコミュニケーションを取らなければなりません。変電所に接続する際、GIS を使って、我々の送電線がどのように送電施設に入ってくるのか、送電線がどのように送電施設から出てくるのか、そしてどのようにルーティングする必要があるのかについて会話しています」とギルデアは語ります。
送電網を成長させる地理的アプローチ
送電網運営者にとって、クリーンエネルギー時代への対応は、かつてないペースで送電線や変電所を新設することを意味しています。位置情報ソフトウェアによって、送電網計画担当者は風力発電所を監視し、それに応じて送電網の拡張を計画することができます。
フィングリッドの色分けされた公開 GIS 地図では、緑は許可待ちのプロジェクト、黄色は許可が下りたプロジェクト、赤は建設中または運転中のプロジェクトを示しています。
トゥオノネン氏は、位置情報技術が提供する運用状況について、「何が起こっているのか、すぐに把握することができます」と語ります。
フィングリッドが発電事業者から新規接続の問い合わせを受けると、その問い合わせはプロジェクトの状況や予想出力などの基本データとともに GIS に記録されます。会議が進むにつれ、発電事業者とフィングリッドの顧客マネージャー、プランナー、専門家によってデータが追加・更新されていきます。
フィングリッドは、将来の開発と現在の容量を視覚化することができ、風力発電事業者へのアドバイスに役立っています。
現在、あまり好ましくない接続ポイントが利用できるかもしれませんが、生産者が数年待てば新しい送電線によって接続が容易になり、容量が増えるかもしれません。
「私たちは、今後数年間のさまざまな地域における再生可能エネルギーの生産能力の発展を予測し、毎年新しいデータで見通しを更新しています。」とトゥオノネン氏は話します。
タービンで発電される電力は、原子力発電所や水力発電所よりも安定性が低いため、GIS 分析によってエネルギー生産者は、変動幅を平準化するためにさらなる投資が必要な場所を知ることもできます。
クリーン・エネルギー生産者や消費者に電力を送る送電網運営者にとって、立地に関する洞察はエネルギー転換の中心的役割を果たします。GIS は、業務の全体像を把握し、進捗を早め、投資決定を改善するための調整を可能にするのです。
「私たちが歩んできた道のりは、協力することでした。私たちが歩んできた道のりは、コラボレーションです」と、ネクステラ・エナジー社のノリス氏は語ります。