現地調査に特化した多機能現地調査アプリ ArcGIS Field Maps (以下「Field Maps」) が 2025 年 9 月 30 日 (日本時間 2025 年 10 月 1 日) にアップデートしました。今回のアップデートでは、ArcGIS Workforce のタスク機能の移行とモバイル アプリの機能強化が行われました。本記事では、タスク機能を中心にご紹介します。
目次
タスク機能について
Field Maps に新たに追加されたタスク機能により、現場作業の計画と調整をより効率的に管理できるようになりました。モバイル作業者は、自身の作業内容を端末上でリスト化し、優先順位を設定することで、現場での作業をより効率的に進めることができます。
一方、作業管理者は、作業の割り当てを迅速に行えるだけでなく、作業の進捗を逐一確認でき、進捗を可視化することで、現地調査業務全体の最適化を図ることが可能です。
タスクで利用できる機能は以下のとおりです。
- 管理者による事前作業と管理 (オフィス)
- 作業の作成、割り当て、優先順位付け
- リアルタイムでの調整
- モバイル ワークフローの構成
- 作業進捗の追跡
- 作業員による操作 (現場)
- タスクの実行
- 未割り当てのタスクを引き受け
- タスクの作成
タスクを使ってみよう
Field Maps でタスクを使用するためには、Field Maps Designer でタスクを構成する必要があります。その際、タスク レイヤーが自動的に生成されますが、このレイヤーにはデフォルトの設定とフィールドが含まれており、迅速にタスク機能を利用できます。
主な流れは以下のとおりです。
- 作成 (フォームの作成とタスクの有効化)
- 構成 (タスクで使用する属性の入力と基本設定)
- カスタマイズ (任意のフォームやポップアップ)
- 共有 (タスクの割り当てとタスクを含むマップの共有)
- 実行 (割り当てられたタスクを実行)
上記の流れに沿って、電灯と電柱の現地調査ワークフローを例に、管理者がタスクを構成し、複数のモバイル作業者にタスクを割り当て、モバイル作業者がタスクを実行する一連の流れをご紹介します。
作成
タスク機能を利用する最初のステップは、タスクを有効化することです。
Web マップの作成などの基本的な Field Maps の構成方法についてはスタートアップ ガイドをご参照ください。
- Field Maps Designer を起動し、新しいマップを作成します。
- レイヤーの設定時に以下の項目を有効化し、マップを作成します。
- タスクが作成され、モバイル作業者に割り当てられますか?
- フォーム キャンバスが表示され、レイヤーに [タスク レイヤー アイコン] が表示されます。
これでタスクが有効化され、[フォーム] タブ、[タスク] タブに以下の項目が自動で生成されます。
- [フォーム] タブ
- Task Type (必須フィールド): ワークフローに則したタスクのタイプ
- Assignee (必須フィールド): 担当するモバイル作業者
- Status (必須フィールド): 進捗状況
- Priority (必須フィールド): 優先順位
- Due Date (フィールド): 期日
- Description (フィールド): 説明
- Notes (フィールド): 備考
- [タスク] タブ
- 未割り当て
- 割り当て済み
- 進行中
- 完了
なお、それぞれのレイアウトの中にはいくつかのアクション (ステータスの変更、ルート案内など) が内包されており、これらを使用することで迅速にタスクのワークフローを構築できます。
既存のレイヤーでタスクを有効化することも可能です。
構成
タスクの有効化で自動的に生成された [フォーム] タブ内の [Task Type] や [Assignee] を編集して、タスクの分類や割り当てる作業員を設定します。
- フォーム キャンバス内の [Task Type] を選択し、[プロパティ] を開きます。
- [プロパティ] 内の [リストの編集] を選択し、以下のようなリストを作成します。
これにより「電灯」と「電柱」の 2 種類のタスクを作成できます。
次に [Assignee] を構成します。[Task Type] と同様に [リストの編集] で設定もできますが、今回は [タスク] タブの [タスク設定] パネルから設定します。
- [タスク] タブを開き [タスク設定] を選択し、タスク設定パネル内の [担当者] をクリックします。
- リストの編集画面下部にある [組織から選択] を選択し、組織内のユーザーを選択します。

なお、選択できるユーザーは Mobile Worker 以上のユーザー タイプに限られます。
これによりタスクを割り当てるユーザーを予め設定することができ、タスクを実行するための構成が完了しました。
その他のフォームの構成についてはヘルプをご参照ください。
次のステップでは、タスク機能をより効果的に活用するためのカスタマイズについて説明します。
カスタマイズ
[タスク] タブのレイアウト キャンバスでは、タスク レイアウトとアクションを設定できます。これにより、タスクの実行時に属性を自動入力したり、ファイルを添付したりする仕組みを構成できます。
- [タスク] タブ内の [進行中] を選択し、タスク レイアウト キャンバスを開きます。
この画面では、タスクが「進行中」である場合に、操作できるタスク アクション (機能) を構成できます。デフォルトでいくつかのアクションが含まれていますが、[レイアウト エレメント] から任意のアクションをドラッグ アンド ドロップで追加できます。
- [レイアウト エレメント] 内の [フィールドの編集] をレイアウト キャンバスにドラッグ アンド ドロップで追加します。
ここでは [フィールドの編集] を使用して、「進行中」のタスクを実行時に Arcade 式を利用して、「調査実施日 (Survey_Date)」Date 型フィールドに現在日時を入力する仕組みと、「調査結果(Survey_Result)」String 型フィールドに結果を手動で入力する仕組みも構築します。
- [フィールドの更新] で以下のように設定します。
Arcade 式を利用した日時の取得方法はこちらをご参照ください。
更新タイプには「自動」の他、「手動」、「自動と手動」があり、柔軟な入力規則を構成できます。
その他のアクションやレイアウトのカスタマイズについてはヘルプをご参照ください。
共有
タスクのワークフローを構築できたら、タスクを作成してモバイル作業者に割り当て、マップを共有します。
タスクの作成と割り当て
- Map Viewer でタスクが有効化されている Web マップを開きます。
- [レイヤー] タブでタスク レイヤーを選択し、[編集] をクリックします。
- 任意のタスクを選択し、必要な属性情報を入力します。
動画では、「割り当て済み」ステータスのタスクを作成し、モバイル作業者にタスクを割り当てています。
ArcGIS Instant Apps や ArcGIS Experience Builder、ArcGIS Web Editor などのアプリでもタスクの作成と割り当てが可能です。
マップの共有
- Field Maps Designer に戻り、[共有] タブを選択し、共有レベルを [組織] や特定のグループに変更します。

- 共有オプションの [リンクを使用して共有] または [QR コードを使用して共有] を使用してモバイル作業者にマップを共有します。
実行
タスクの構成が完了し、共有されたマップは、通常の Field Maps と同様にモバイル端末で表示できます。ここでは標準的な利用例として、割り当てられたタスクを実行する流れを説明します。
- モバイル端末でタスクが構成されたマップを開きます。
- 自分に割り当てられたタスクを選択します。
[自分に割り当て済み] を選択することで、自分のタスクを一覧で表示し、タップすることで個別のタスクを表示できます。
その他にも表示されるタスクの順番や情報を任意でフィルターできます。フィルターの構成は管理者が設定できます。詳しくはヘルプをご参照ください。
- 個別のタスクを表示したら、[開始] をタップしてタスクを開始します。
[開始] をタップした場合、デフォルトは以下の流れでタスクが進行します。
- [開始]: 調査の開始
- [進行中]: 調査の実施
- [完了]: 調査の完了
以下の動画では上記で今回設定した内容に沿って、[開始] をタップすると [進行中] に切り替わり、[フィールドの編集] で属性の入力を行っています。
このように、Field Maps 上で自分に割り当てられたタスクを素早く確認し、調査を実施することで、業務の効率化を実現できます。
通常の Field Maps でデータを収集する操作と同様にモバイル上でタスクを新規作成することもできます。
以下の動画では新規タスクを作成しています。
その他の新機能
複数の編集
モバイル端末上で複数のフィーチャを編集する際、構成したフォームを利用できるようになりました。これにより、現場にとって最適なフォーム画面を操作して複数のデータを一度に編集できます。
個人用のマークアップ
個人用のマークアップを使用することでマップ上に、メモなどを描画できます。
なお、作成した個人用のマークアップは、スクリーンショットまたは .markup ファイルとして端末間で共有できます。
ジオフェンス
ジオフェンスのソース フィーチャに対する編集がリアルタイムで反映されるようになりました。これまでジオフェンスの編集を反映させるには、モバイル端末でマップを再読み込みする必要がありましたが、その手間が省け、対話的にジオフェンスを利用できます。
動画では、調査員が火災を発見してフィーチャを追加したあと、現場に近づいています。調査員が火災から 10 m 以内に近づいた際に、危険を知らせるポップアップが表示されています。
まとめ
長年ご要望いただいていたタスク機能が Field Maps に実装されたことで、現地調査業務をより効率的に行えるようになりました。新しくなった Field Maps をぜひお試しください。