【Esri Japan AI Weeks】ArcGIS Survey123 を使用した現地調査で AI による画像解析を実現しよう!

ArcGIS Survey123 (以下「Survey123」) では、現地調査の効率化をさらに推進するため、解析ツール (ベータ版) が導入されています。解析ツール (ベータ版) では、撮影された写真から AI を使用して自動的に情報を抽出することで、調査票の入力時間を短縮することが可能です。本記事では、Survey123 における解析ツールの概要と、その利用方法についてご紹介いたします。

本記事は、ArcGIS で利用できる AI を紹介する Esri Japan AI Weeks 3 日目の内容です。ぜひ他の投稿もチェックしてみてください。

本記事で取り上げる AI は 2025 年 8 月現在ベータ版での提供となっております。ESRIジャパンで提供する Esri 製品サポート サービス開発者サポート サービスはご利用いただけませんので、予めご了承ください。
また、本記事で紹介するプロンプトを使用しても、内部の処理や状況によって出力が異なる場合があります。
ArcGIS における AI の信頼性についてはこちらの記事をご参照ください。

Survey123 とは

Survey123 は、現地調査の準備、実施、集計作業という 3 ステップをシンプルかつ直感的な操作で行うことができる GIS アプリケーションです。3 つのステップをこれ 1 つで完結でき、紙ベースの業務からの脱却と、調査業務のデジタル化を力強く後押しします。

Survey123 の利用事例については事例・活用法 (esrij.com) をご参照ください。

解析ツールとは

解析ツールでは、AI を使用して画像から情報を抽出することができます。AI モデルはあらかじめ用意されており、トレーニングを行う必要はありません。加えて、AI への指示は文章で行うことができ、AI や IT に関する技術的な知識の少ない方でも効率的に画像解析の機能を持った調査票を作成できます。

解析ツールを利用する際はイメージの質問項目と、テキストまたは数値の質問項目が必要です。調査の際は、はじめに画像を取得します。取得された画像の情報は AI によって読み取られ、各調査項目に自動で入力されます。

現在、解析ツールは Survey123 Web デザイナーのみで構築でき、Web アプリを使用して回答する場合のみ利用可能です。また、パブリックな調査ではご利用いただけません。
テキストと数値の質問項目のみ自動入力が可能です。

解析ツールの使い方

AI アシスタント機能と解析ツールの有効化

Survey123 の解析ツールは組織の管理者が ArcGIS Online 組織サイトと Survey123 Web サイトの両方でアシスタント機能を有効化した場合にのみ利用できます。Survey123 Web サイトで解析ツールを有効化する手順は以下の通りです。

ArcGIS Online 組織サイトで AI アシスタント機能を有効化する方法はこちらの記事をご参照ください。

  1. Survey123 Web サイト (https://survey123.arcgis.com/) に組織の管理者としてログインします。
  2. [組織] タブを開き、[設定] をクリックします。
  3. [エクステンション] で [解析ツールの有効化] をオンにして、[保存] をクリックします。

また、組織の設定によってはベータ版機能が無効化されている場合があります 。ベータ版機能の利用に関する設定を確認する手順は以下の通りです。

  1. ArcGIS Online に組織の管理者としてログインします。
  2. [組織] タブの [設定] ページで [セキュリティー] をクリックします。
  3. スクロール ダウンするか、右側の見出しで [アプリ] をクリックして、[アプリ] セクションを開きます。
  4. [ブロックする Esri アプリと機能] で [ベータ版である間、Esri アプリと機能をブロックします。] が無効化されていることを確認します。

利用例 1: 

解析ツールでは、画像からテキスト情報を抽出し、自動で回答を入力することができます。現地での入力作業を削減し、誤入力の少ないより精度の高い調査が可能です。本記事では利用例として、以下のような車両のナンバー プレートの写真から情報を抽出し、自動入力する調査票を作成します。

調査票を作成する方法の詳細については Survey123 スタートアップ ガイドをご参照ください。

  1. Survey123 Web サイトで [新しい調査] → [空白の調査] クリックし、調査票の作成を開始します。
  1. [調査のタイトルが設定されていません] をクリックし、画面右側の [編集] タブで [テキスト] を「ナンバー プレート調査」に書き換えます。書き換えると調査のタイトルが自動で更新されます。
  1. [調査の説明コンテンツ] をクリックし、画面右側の [編集] タブで [テキスト] を「車両のナンバー プレートの写真を撮影し、回答を行ってください。」と書き換えます。
  2. [追加] タブを開いて [イメージ] をドラッグ アンド ドロップで追加し、[編集] タブで [ラベル] を「ナンバー プレート画像」に変更します。
  1. [追加] タブを開いて [単一行テキスト] をドラッグ アンド ドロップで追加し、 [編集] タブでラベルを「地名」に変更します。
  2. [編集] タブを下にスクロールし、[計算] の [編集] をクリックします。その後、計算の抽出ウィンドウで、[質問からプロパティを抽出] を以下のように設定して、[次へ] をクリックします。
    • 上段: ナンバー プレート画像
    • 下段: 画像の解析
  1. [この画像から何を抽出しますか?] に抽出したい情報を説明する文章を入力 して、[OK] をクリックします。
    今回は「車両のナンバープレートから地名を取得してください。地名はナンバープレート上段の左側で、ひらがなまたは漢字を使用して表記されます。」と入力します。

入力内容は一例です。AI が文章から内容を読み取り、情報を抽出するため、実行結果が異なる場合があります。正しく抽出できない場合は表現を変更して再度お試しください。

  1. [単一行テキスト] を 3 つ追加し、それぞれ同様の操作で以下のようにラベルと計算を設定します。
    • 単一行テキスト 1
      • ラベル: 分類番号
      • この画像から何を抽出しますか?: 車両のナンバープレートから分類番号を取得してください。分類番号はナンバープレート上段の右側で、2 ~ 3 桁の数字または英語 を使用して表記されます。
    • 単一行テキスト 2
      • ラベル: ひらがなこの画像から何を抽出しますか?: 車両のナンバープレートから識別用のひらがなを取得してください。ひらがなはナンバープレート下段の左側で、ひらがな 1 文字を使用して表記されます。
    • 単一行テキスト 3
      • ラベル:  一連指定番号 (ナンバー)
      • この画像から何を抽出しますか?: 車両のナンバープレートからナンバーを取得してください。ナンバーはナンバープレート下段の右側で、○○-○○のスタイルで表記されます。
  2. 調査票を [保存] して [公開] します。
  3. 調査票に回答します。ナンバー プレートの画像を撮影または追加するだけで複数の調査項目が自動で入力されます。

利用例 2:

解析ツールでは、画像の状況を読み取り、テキスト形式で出力することも可能です。下の動画では、窓ガラスの写真から破損を判定し、状況を説明する文章を自動で入力しています。AI への指示を工夫することで、現地で回答を入力する手間を大幅に削減できます。

下の動画の例では、 2 つのテキストの質問項目で情報の抽出を行っています。解析ツールへの指示内容はそれぞれ以下の通りです。

  • 窓ガラスの破損 はい or いいえ
    • この画像から何を抽出しますか?: 被害画像に写る窓ガラスが割れている場合は「はい」を、割れていなければ「いいえ」を入力してください。
  • 窓ガラスの説明
    • この画像から何を抽出しますか?: 画像の内容を50 字程度の日本語で簡単に説明してください。

まとめ

本記事では、解析ツール (ベータ版) を利用し、撮影された写真から AI を使用して自動的に情報を抽出する方法についてご紹介いたしました。画像から自動で情報を抽出することで、調査票の入力時間を短縮することが可能です。AI や IT に関する技術的な知識の少ない方でも簡単に設定いただけますので、ぜひお試しください!


Esri Japan AI Weeks では ArcGIS で利用できる AI の記事を月曜日から金曜日の 5 日間、2 週にわたって投稿いたします。明日は Survey123 の  AIによる音声分析やテキスト分析をご紹介します。

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