70 年前と現代はどのくらい違う?ArcGIS Pro で「カエデ」の紅葉時期を地図上に可視化してみた

はじめに

もうすぐ全国各地で紅葉シーズンが到来します。見頃予想を参考に旅行の計画を立てている方も多いのではないでしょうか。

今回は 1955-1964 年と 2015-2024 年のかえでの平均紅葉日を ArcGIS Pro で可視化してみました。今から約 70 年前の日本では、かえではいつ頃紅葉していたのか。そして現代、その時期はどのくらい変化しているのか。2 つの時代の地図を見比べながら、日本の秋の変化を探ってみます。

本記事における「かえで」は、気象庁の観測方法にならい、主に「いろはかえで」を指します。また、「紅葉日」は、標本木全体を眺めたときに、大部分の葉の色が紅色に変わった状態となった最初の日を指します。

利用したデータ、手法、結果の読み取りについて

本地図は、気象庁の生物季節観測データの「かえで紅葉」を基に作成しました。1955-1964 年と 2015-2024 年の各 10 年間について、異常値を除いた観測値が 3 年以上ある地点を抽出し、地点ごとに平均紅葉日を算出しています。

その後、ArcGIS Pro の Geostatistical Analyst エクステンションに含まれる「EBK 回帰予測 (EBK Regression Prediction)」を使用し、観測地点のデータに基づいて全国の紅葉日の分布図を作成しました。推定の際には、緯度や標高による影響も考慮しています。

地図上の日付は、すべての場所で実際に観測された紅葉日ではなく、観測地点のデータから推定した値です。特に、観測地点から離れた地域や山岳地域では、観測地点の数や分布、推定方法の影響を受け、実際の紅葉日と大きく異なる可能性があります。

また、今回の推定では、森林限界やかえでの分布域を考慮していません。そのため、かえでの生育が想定されない高標高域などにも、紅葉日が算出されている場合があります。こうした地域では極端に早い紅葉日が示されることがあるため、山間部の結果については、具体的な日付そのものではなく、周辺地域と比べて紅葉が早い、または遅いという相対的な傾向としてご覧ください。

70 年前 (1955-1964 年) の紅葉を見る

最初に、1955-1964 年の観測データから作成した地図を見てみましょう。

この地図では、かえでの紅葉日に応じて、赤から緑のグラデーションで色を付けています。全国を俯瞰してみると、北海道から九州へ向かって徐々に紅葉が移っていく様子が確認できます。

日本列島で最初に紅葉が始まるのは、大雪山周辺や日本アルプスなどの高標高地域で、8 月末頃から 9 月上旬頃にかけて紅葉が始まっていたようです。主要都市に目を向けると、札幌では 10 月頃、仙台や新潟など北日本では 11 月上旬頃に紅葉が始まっています。そして、東京や名古屋、大阪といった関東以南の大都市では 11 月中旬頃に紅葉を迎えていました。現在の感覚と比べると、やや早い時期に紅葉が始まっていたようにも見えます。

また、同じ地域の中でも紅葉の時期には違いが見られます。例えば中部地方では、日本アルプス周辺の山岳地域で全国でも特に早く紅葉が始まる一方、平野部や沿岸部は周辺地域と同じころに紅葉しています。今回の地図では、緯度に加えて標高も考慮して紅葉日を推定しているため、山地と平野部における紅葉開始時期の違いも表現されています。

日本列島全体で見ると、紅葉は 8 月末頃から 11 月末頃にかけて3 か月以上の時間をかけて南下しており、地域によって大きく異なるタイミングで秋が訪れていたことが分かります。

現代 (2015-2024 年) の紅葉を見る

続いて、2015-2024 年の観測データから作成した地図を見てみましょう。

この地図からも、紅葉が北海道から九州へ向かって順に始まっていく様子が確認できます。北から南へと移っていく大まかな傾向は、70 年前の地図と変わりません。

一方で、先ほどの地図とは少し異なる印象を受けます。全体的に赤色の範囲が少なくなり、緑色や黄色の範囲が広がっています。主要都市に目を向けると、札幌では 11 月の初め、仙台や新潟では 11 月下旬頃、東京や名古屋、大阪では 12 月上旬頃に紅葉が始まっていました。

高標高地域では、やはり周辺地域より早く紅葉が始まっているようですが、こちらも開始時期が後ろにずれています。推定結果の不確実性を考慮する必要がありますが、平地・山地を問わず、全国的に紅葉の開始時期が遅くなっているようです。

それでは、70 年前と現代ではどのくらいの違いがあるのでしょうか。次章では 2 つの地図を比較してみます。

70 年前と現代はどのくらい違うのか比較する

ここまで見てきた 2 枚の地図を並べてみると、紅葉が北から南へ向かって進んでいく大まかなパターンは、70 年前も今も変わっていないことが分かります。また、高標高地域ほど早く紅葉が始まる傾向も共通して見られます。

一方で、紅葉が始まる時期に着目すると、全国的に現代の方が遅くなっていることが分かります。主要都市の観測データを見ると、札幌では18 日、仙台では 20 日、東京では 17 日、名古屋では 12 日、大阪では 11 日の違いがありました。多くの都市で紅葉の開始が 2 ~ 3 週間程度遅くなっています。

地図からもその傾向は読み取れますが、数値として比較するとさらに分かりやすくなります。ArcGIS Pro で今回作成した予測面の平均値を比較すると、1955-1964 年の平均紅葉日は 10 月 24 日、2015-2024 年は 11 月 17 日でした。紅葉開始の全国平均は 3 週間ほど遅くなっていたことが分かりました。

さらに、地域ごとの変化を詳しく見るため、2015-2024 年の推定結果から 1955-1964 年の推定結果を差し引き、紅葉日が遅くなった日数を地図に表しました。色が濃い地域ほど、70 年前と比べて紅葉の開始時期が大きく遅くなったことを示しています。

地図を見ると、遅れの大きさは全国で一様ではなく、地域によって違いがあることが分かります。平地では 15~25 日程度の差が推定された地域が広く分布する一方で、北海道や東北地方、中部地方などの山岳地域ではより大きな差が推定された場所もあります。

各年代の特に早い、または遅い推定紅葉日や、山岳地域の推定結果には、観測地点の数や分布、標高を考慮した推定方法の影響が含まれている可能性があります。また、年代間の差が大きい地域についても、具体的な日数そのものではなく、周辺地域と比較した相対的な傾向としてご覧ください。

紅葉が始まる地域の順序や分布パターンは大きく変わっていない一方で、日本列島全体として紅葉シーズンが後ろへ移動している様子が見えてきました。

このような変化は観測地点ごとのデータからも把握できますが、地図として可視化することで、日本全体の分布や地域ごとの特徴をより直感的に理解できます。地図を見比べながら、自分の住む地域や訪れたことのある地域に注目してみると、新たな発見があるかもしれません。

おわりに

今回は、気象庁の生物季節観測データを利用して、1955-1964 年と 2015-2024 年のかえでの紅葉開始時期を ArcGIS Pro で可視化してみました。観測データを地図上に可視化することで、紅葉が北海道から九州へ向かって進む様子や、山岳地域と平野部の違いなど、日本列島における秋の移ろいを視覚的に捉えることができました。

また、70 年前と現代の地図を比較してみると、多くの地域で紅葉の時期に変化が見られることが分かります。数値の一覧だけでは気付きにくい傾向も、地図として表現することでより分かりやすくなります。

皆さんもぜひ身近なデータを利用して、地図上に可視化してみてください!

参考

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