2014 年 3 月 に、米国カリフォルニア州パームスプリングスで開催された、全世界の GIS 開発者を対象としたイベント、Esri International Developer Summit において、Windows プラットフォームの新しい開発キット(SDK)である ArcGIS Runtime SDK for .NET のベータ版が発表されました。
ArcGIS Runtime SDK for .NET は、既存の ArcGIS Runtime SDK for WPF(デスクトップ)、ArcGIS Runtime SDK for Windows Phone(スマートフォン)、そしてベータ版として開発が進んでいた ArcGIS Runtime SDK for Windows Store apps(タブレット)の 3 つの SDK の後継となる新しい SDK です。この SDK を利用することで、データ編集、ジオコーディング、ルート解析など様々な GIS 機能を実行するアプリケーションをデスクトップからモバイルまで幅広い環境を対象に開発することができます。
ArcGIS Runtime SDK for .NET を利用するメリット
ArcGIS Runtime SDK for .NET は Windows デスクトップ、Windows ストア、Windows Phone の 3 つのプラットフォームに API ライブラリを提供します。3 つのライブラリは共通の構造を持っているため、異なるプラットフォーム間でコードを共有することが可能です。たとえば同じ機能をもったアプリケーションをデスクトップ向けとタブレット向けに 2 種類開発する必要がある場合に、ビジネス ロジックのコードを共有化することで開発効率を大きく向上させることができます。
また、ArcGIS Runtime SDK for .NET は その他のネイティブ アプリケーション用の SDK である ArcGIS Runtime SDK for Android や ArcGIS Runtime SDK for iOS と同じフレームワークをベースとして開発されているため、オフライン環境での編集や解析といった、今後 Esri が提供する最新機能がその他の ArcGIS Runtime SDK と同じように実装される予定です。
ArcGIS Runtime SDK for .NET へ移行する際の留意点
すでに既存の ArcGIS Runtime SDK for WPF を利用されている場合、ArcGIS Runtime SDK for .NET へ移行することで、Esri の最新機能が利用できるなどのメリットがありますが、移行を行うには留意すべき点があります。既存の WPF SDK と 新しい .NET SDK は完全な互換性を持っていません。これは、WPF SDK が Web GIS アプリケーションを開発するための ArcGIS API for Silverlight をベースに開発されたのに対して、.NET SDK は iOS SDKや Android SDK などのネイティブ アプリケーション用 SDK のフレームワークをベースに開発されているためです。2 つの SDK に完全な互換性がないため、既存の WPF SDK で作成されたアプリケーションを新しい .NET SDK に移行するにはソースコードを変更する必要があります。このため Esri は移行期間としてしばらくの間、既存の WPF SDK を継続してサポートする予定です。
ArcGIS Runtime SDK for .NET のロードマップ
現在、ArcGIS Runtime SDK for .NET はベータ版として検証が進んでおり、米国において 2014 年の後半に正式なリリースを予定しています。ESRIジャパンも日本国内でのサポートに向けて検証を行っており、国内のユーザ様にこの新しい SDK を利用して頂けるように技術情報を積極的に発信していきます。
新しい .NET SDK によって Windows デスクトップだけでなく、近年注目を集めている Windows タブレットにも、GIS ソリューションを簡単に組み込むことができるようになります。またオフライン編集をはじめとした新機能によって、Windows プラットフォーム上でより強力なデスクトップおよびモバイル GIS ソリューションを実現することが可能になります。新しい ArcGIS Runtime SDK for .NET にぜひご期待ください。
※本稿の内容は ArcGIS Runtime SDK for .NET のベータ版時点の情報に基づいており、製品の正式リリース時に提供される機能・サービスとは異なる可能性があります。
■関連リンク
・ArcGIS Runtime SDK for .NET (Beta)