衛星画像を使って過去からの変化を抽出しよう

Change Detection という言葉をご存知でしょうか。日本語にすると「変化検出」や「変化抽出」と言い、2 時期の画像から変化した場所を抽出する分析手法です。本ブログでは、ArcGIS Desktop のエクステンションの一つである FEATURE ANALYST を用いた、2 時期の衛星画像の変化抽出画像の作成とその変化をフィーチャとして抽出する例をご紹介します。

FEATURE ANALYST って?

画像からフィーチャを抽出する機能に特化した ArcGIS Desktop のエクステンション製品です。空間的関連性や階層的学習機能を利用してフィーチャ抽出を行います。

詳細は FEATURE ANALYST 製品ページへ

  • FEATURE ANALYST は ArcMap でのみ利用可能です。

Change Detection を行う画像

今回利用した 2 時期の画像は、東京湾周辺の衛星画像でどちらも無償で取得することができます。

1 時期目: JERS-1/VNIR 1997 年 7 月 5 日撮影 解像度 20 m

JERS-1 (ふよう 1 号) は、1992 年 2 月から 1998 年 10 月まで活動していた衛星で、光学センサーと合成開口レーダーにて資源探査を目的に観測を行っていました。現在、JAXA 配信の G-Portal より無償でダウンロードすることができます。

2 時期目: Sentinel-2 2017 年 5 月 8 日撮影 解像度 20 m

Sentinel-2 は、現役で陸域観測を行っている光学衛星で、以前のブログでもご紹介した無償で利用できる衛星画像の一つです。詳細は「衛星画像もオープンな時代に? ― Sentinel-2 on AWS から無償で衛星画像データをダウンロードできます!」をご参考ください。

~前処理~

  1. JERS-1 画像は、G-Portal で提供されている専用のツールを用いて RGB 画像に変換します。JERS-1 の RGB 画像は、緑・赤・近赤外バンドの 3 バンドで構成されています。
  2. Sentinel-2 画像は、JERS-1 画像と同じ波長帯の 3 バンドを選択してコンポジットしておきます。
  3. 2 時期の画像で同じエリアを切り取ります。

※Sentinel-2 はバンドによって解像度が異なりますが、今回利用した近赤外バンドの解像度に合わせて、20 m 解像度の画像にしています。また、両画像とも画像補正は位置補正しか行っておりません。

【Red・Green・Blue = 近赤外・赤・緑】の RGB カラー合成の組み合わせで表示します。

およそ 20 年違うと画像を横に並べるだけでも変化している場所が分かりますね。

変化抽出画像の作成

FEATURE ANALYST には、変化抽出画像を作成するための [Prepare Change Detection Layer] ツールがあります。

[Prepare Change Detection Layer] ツールで Before と After に 1997 年と 2017 年の画像を当てはめます。

名前を付けて保存すると 2 時期の画像のコンポジット画像が出力されます。

Band1 から 6 に Before → After の順にバンドがコンポジットされています。RGB カラー合成を【Red・Green・Blue = 2017 年・1997 年・2017 年】の組み合わせにすると以下のように紫色と緑色の擬似カラーの画像が表示できます。これが変化抽出画像となります。

Red と Blue に割り当てた 2017 年のバンドは紫色になり、Green に割り当てられた 1997 年のバンドはそのまま緑色に表示されます。これによって、緑色は 2017 年に存在せず 1997 年に存在するもの、紫色は 2017 年に存在し 1997 年に存在しないものと表現することができます。

上記の変化抽出画像は、1997 年と 2017 年の近赤外バンドを指定しているため、植生の変化を主に表現していることになります。

変化した場所の抽出

上記で作成できた変化抽出画像から 2017 年までに変化した場所を抽出します。

  1. サンプルデータを作成します。

[Create New Feature Class] ツールを使って、空のポリゴンフィーチャを作成し、抽出したい対象のサンプルデータを作成します。

  1. 作成したサンプルデータを使って教師分類によるフィーチャ抽出を行います。

[Supervised Learning] ツールで以下のように設定します。

パラメータの一つ [Feature Selector] には、目的のフィーチャに適したおおよその学習設定がされています。今回は、建物や植生といった特定のフィーチャ指定は行わず、開発エリアといった土地被覆による抽出を行うという目的で [LandCover Feature] を選択しています。

[Supervised Learning] ツールを実行すると抽出結果が出力されます。

羽田空港の滑走路や埋め立て処分場、豊洲、東京ディズニーリゾートの新しいエリアなどの新たに開発された場所をフィーチャとして抽出することができています。

いかがでしたでしょうか。
今回、FEATURE ANALYST で作成した変化抽出画像は、ArcGIS の [コンポジット バンド] ジオプロセシング ツールやラスター関数のコンポジット バンド関数を使うと同じ画像を作成できます。バンド演算で NDVI (正規化植生指数) 画像を作成すると、植生による 2 時期の変化を観ることができます。

現在、多くの衛星画像が無償で利用できるようになっていますので、衛星画像を利用して過去から今を抽出してみませんか。

■関連リンク
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