Sentinel-2 衛星画像からオーストラリア火災を見る

記録的な熱波や長期的な干ばつの影響により、昨年 9 月頃から 5 ヵ月以上も続くオーストラリアの火災。まだまだ鎮火する気配が無いようです。オーストラリアの生態系や人々の暮らしに多大な影響を与えているニュースを聞くたびに胸が痛みますね。

ニュースでは現場の被害状況などが写真や動画で伝えられたり、火災の発生地点マップなどで伝えられていると思いますが、今回は別のアプローチ方法として、ArcGIS Online を使って衛星画像から被害状況を把握してみます。

MODIS データから火災地点を把握

火災などの Thermal Activity (温度の高い場所) は、ArcGIS Living Atlas からフィーチャ サービスとして配信されている MODIS レイヤーから取得できます。この Thermal Activity は NASA の地球観測システム (EOS) ではセンサーで計測され、48 時間以内のデータが 30 分間隔で更新されています。ArcGIS Pro にこちらのデータを追加し、現在の Thermal Activity の状況を把握します。

  1. ArcGIS Online にサインインし、マップを開きます。
  2. [追加] → [Living Atlas レイヤーの参照] をクリックします。
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  3. [レイヤーの検索] のテキスト ボックスで「MODIS」と入力し、[追加] ボタンをクリックして、[Satellite (MODIS) Thermal Hotspots and Fire Activity] レイヤーを追加します。
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  4. マップ上に Thermal Activity のポイントが表示されます。世界中にポイントがありますが、今回はオーストラリア大陸まで拡大し、Thermal Activity が高い任意のポイントを拡大します。今回はシドニー南の付近を拡大しています (青枠)。
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    ポイントをクリックすると、Thermal Activity の説明が表示されます。
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Sentinel-2 衛星画像から火災を確認

MODIS のポイントから現在火事が発生している可能性が高い場所が特定できたので、その地域の Sentinel-2 衛星画像を探します。Sentinel-2 は欧州宇宙機関 (ESA) が開発する地球観測ミッションであり、米国 Esri から β 版としてイメージ サービス レイヤーが公開されています。本サービスは無償で利用できますが、ArcGIS Online 組織向けアカウントまたは開発者向けアカウントが必要です。

  1. ステップ 2、3 を繰り返し、テキスト ボックスに [Sentinel-2] と入力して、[Sentinel-2 Views] レイヤーを追加します。Sentinel-2 の衛星画像が追加されます。
  2. [コンテンツ] タブ → [Sentinel-2 Views] レイヤーのオプションをクリックして [画像フィルター] をクリックします。
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  3. 任意の範囲を拡大した上で、[画像フィルター] ウィンドウの [属性] で [aquisitiondate] フィールドを使用し、任意の日時の画像を絞り込みます (ここでは、2020 年 1 月 15 日の画像を使用します)。任意の画像を選択し、[新しいレイヤーとして追加] ボタンをクリックして追加します。
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  4. [Sentinel-2 Views] レイヤーをオフにし、ステップ 7 で追加したレイヤーの [オプション] → [画像表示] をクリックします。
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  5. [画像表示] のレンダリングを確認すると、現在は [Natural Color with DRA] となっているのが分かります。こちらは、Sentinel-2 のバンド Red、Green、Blue (4,3,2) バンドの組み合わせで、植生が緑になるようなレンダリング方法です。ドロップ ダウン リストから [Short-wave Infrared with DRA] を選択します。これは、Sentinel-2 の Short-wave Infrared 2、Short-wave Infrared-1、Red (12,11,4) バンドの組み合わせで、火災などの熱が強調されるレンダリング方法です。DRA (Dynamic Range Adjustment) とは、バンドのストレッチが画面の表示範囲に応じて自動調整される機能の事です。
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    [適用] ボタンをクリックします。

  1. 結果を比べます。小さくて分かりにくいですが、MODIS の赤いポイントを探し、火災が発生しているであろうエリアまで移動・拡大します。Natural Color 表示では、煙のようなものに覆われて火災も地形もよく見えませんでしたが、Short-wave Infrared 表示にすると、火災が発生している部分が線状に赤く光っているので、はっきりとわかります。
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    画像を縮小してみると、この一枚の衛星画像だけでも様々な箇所で火災が発生しているのが確認でき (白い円内)、被害の大きさを物語っています。fire11

また、別の火災の発生地点の衛星画像 (2019 年 12 月 31 日) も見てみましょう。キャンベラの北東にあるモートン国立公園の付近ですが、この地域でも激しい火災を確認できます。下図では Natural Color および Short-wave Infrared 表示のほかに、NDVI Raw 表示も載せています。NDVI (正規化植生指数) とは植生の活性度を表す指数です。色が明るいほど植生が活発であることを表し、今回の結果では火事によって植生がどれほど被害を受けたのかをより明確に判別することができます。
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今回は ArcGIS Online を使用しましたが、ArcGIS Pro で行う場合は、以前のブログ記事「ダウンロード不要!ArcGIS Online の無償公開 Landsat / Sentinel-2 画像を ArcGIS Pro でラスター解析する方法」で紹介した方法で MODIS や Sentinel-2 のデータを追加し、[処理テンプレート] で [Short-wave Infrared with DRA]、[NDVI colorized] を使用する事で同様の結果を得ることができます。豊富なツールを使用すれば更に高度な解析もできます。ArcGIS Pro をご利用の方はお試しください。

まとめ

このように衛星画像の情報を使ってさまざまな表現に切り替えるだけでも、火災の被害の範囲や実態を知ることができます。また、この結果に対して家屋データや人口データを重ね合わせたり、地質図や植生図を重ね合わせたりすれば、市街地の被害や生態系への影響を解析したりすることもできるでしょう。Sentinel-2 のデータは ArcGIS Living Atlas から無償公開されているので、今回のような自然災害や調査のための一助になれば幸いです。

※本記事は米国 ESRI 社のブログ記事を参考にしたものです。

※本記事は作成時点で公開されていたデータを利用したものです。MODIS や Sentinel-2 などのデータは定期的に更新されるため、上記の手法を試しても同様の結果が得られないこともございますので、ご了承ください。