はじめに
これまで、第 1 回では全国のかんしょ生産状況について、第 2 回では生食用かんしょ生産量日本一の茨城県の農業についてご紹介しました。最終回となる今回は、茨城県内かんしょ生産量 1 位の鉾田市にスポットを当ててみましょう。
※統計データではさつまいもを「かんしょ (甘薯)」と表記する場合が多いため、本記事でもさつまいもを「かんしょ」と表記しています。
かんしょの一大生産地 鉾田市に迫る
生食用かんしょ生産量日本一の茨城県内でも、鉾田市がかんしょ生産量・作付面積ともに 1 位となっています。鉾田市でかんしょの生産が盛んな要因を探ってみましょう。
それでは、こちらの「鉾田市の農地と地形」をご覧ください。
オレンジのポリゴンは「畑」、緑のポリゴンは「田」を示しており、茶色で塗りつぶされている部分は「黒ボク土」です。また、かんしょのシンボルは「かんしょ販売場所」を示しています。
シーン (注 1) を見てみると、鉾田市の全域に黒ボク土が広がっており、市内の農地のほとんどが「畑」であることがわかります。さらに、シーンを拡大してみると、台地では「畑」が、谷では「田」が多くなっています。
シーン内で右クリックしながらドラッグして角度を変えると、地形の細かい起伏がはっきりと見えます。
右側にあるブックマークをクリックすると、鉾田市内の「かんしょ販売場所」にズームします。かんしょのシンボルをクリックすると、ポップアップで販売店名が表示されます。かんしょ販売場所とかんしょ農家が同じ場所に位置するとは限りませんが、鉾田市のかんしょの販売場所は、水はけのよいなだらかな台地上 (かんしょの生育に適した環境が整っている場所) に多くみられるようです。市のほぼ全域が緩やかな台地であり、黒ボク土で覆われている鉾田市は、水はけのよさが重要なかんしょ栽培に最適な場所であるようです。また、太平洋沿岸に位置する市ということで、潮風や乾燥に強いかんしょが積極的に栽培されているのかもしれません。
3D のシーンを使ってアプリケーションを作成したい方へ
本記事でご紹介した Web アプリケーションは、ArcGIS Experience Builder で作成しました。
今回のように、3D シーンをカスタムして共有したい場合は、ArcGIS Experience Builder が適しています (注 2)。
さつまいもの統計データを地図で見てみよう : まとめ
全 3 回にわたって、かんしょについて紹介してきましたがいかがでしたか?
筆者は、かんしょについて知るほど食べたくなってしまい、かんしょが美味しい秋冬が待ち遠しいです。
筆者はかんしょが大好きなので、今回、かんしょに関する無償データを集めて Web アプリケーションを作成してみました。
みなさんもぜひ、興味のある農産物等のデータで Web アプリケーションを作ってみてはいかがでしょうか (注 3)。
第 1 回でご紹介した Web アプリケーションのように、マップにプラス α の機能を付けたいときは ArcGIS Instant Apps 、第 2 回のようにチャートとマップをまとめて表示したいときは ArcGIS Dashboards 、今回のように 3D シーンをカスタムして共有したいときは ArcGIS Experience Builder が便利です。
使用したアプリケーションの使い分けについて、簡単にまとめたものが以下の表です。Web アプリケーションの作成時に参照していただければ嬉しいです。
参考資料
- G空間情報センター「農地筆ポリゴン」
- 茨城県営業戦略部販売流通課「茨城をたべよう 食と農のポータルサイト」
- 国土地理院「基盤地図情報 数値標高モデル」
(注 1)
ArcGIS では、3D のマップのことを「シーン」と呼んでいます。
(注 2)
Web アプリケーションの作成には、ArcGIS Online アカウントが必要です。
(注 3)
無償データであっても、ご利用の場合は公開先の利用許諾をご確認ください。