ノーコードで柔軟な Web アプリを作成できる ArcGIS Experience Builder (以下、「Experience Builder」) が 2025 年 6 月 25 日 (日本時間 2025 年 6 月 26 日) にアップデートされました。今回のアップデートでは、Arcade 式のサポートや ArcGIS GeoBIM 関連の新しいウィジェットの追加など、複数の新機能と機能強化が実装されました。 本ブログでは新機能と機能強化についてご紹介します。
また ESRIジャパンでは、Experience Builder の簡単な利用ガイドとして、ArcGIS StoryMaps で作成されたストーリー マップ「ArcGIS Experience Builder を始めよう!」を公開しています。こちらも是非合わせてお読みください。
目次
新機能
Arcade 式
Arcade 式によるデータの追加や高度な書式設定がサポートされました。Arcade 式を使用してデータを追加することで、元のデータソースを変更することなく、データを拡張、整形して追加することができます。下の例では、市町村人口のフィーチャ レイヤーから必要な 2021 年、2022 年の人口を抽出し、人口増加率を計算してデータを追加しています。
また、テキスト ウィジェットやボタン ウィジェットでは Arcade 式を使用した高度な書式設定が利用でき、表示スタイルを細かくカスタマイズすることができます。詳細はヘルプ「高度な書式設定」をご参照ください。
アプリの状態の復元
ブラウザーのキャッシュを利用し、アプリの利用者が再度アプリを開いた際に、以前の状態を復元して利用できるようになりました。本機能は ArcGIS Online では 2026 年第 1 四半期にリタイアが予定されている ArcGIS Web AppBuilder の機能を移行したもので、開いているページや、マップの範囲、レイヤーの表示設定などを保存できます。
アプリの [一般] タブの [状態および URL パラメーター] で [エクスペリエンスを再度開く時に状態を復元できるようにする] を有効化することで、アプリを再度開いた際にバナーが表示されるようになります。
Autodesk Construction Cloud 関連の 3 つのウィジェット
Autodesk Construction Cloud (ACC) 上の建築、エンジニアリング、建設 (AEC) データを Experience Builder でシームレスに利用するため、3 つの新しいウィジェットが追加されました。追加されたウィジェットの名称と概要は以下の通りです。
- ドキュメント ビューアー: リンクされた 3D モデルと 2D ドキュメントを表示、操作
- リンク エクスプローラー: Web マップやシーンのフィーチャにリンクするプロジェクト データを探索
- ドキュメント エクスプローラー: プロジェクト ドキュメントとデータのフォルダー ツリーを簡単に探索
これらのウィジェットでは、ArcGIS GeoBIM の機能を追加し、BIM モデルや CAD 図面、関連ドキュメントを閲覧するカスタマイズされた Web アプリを作成できます。詳細については別途、本ブログにてご紹介いたします。
表示順序ウィジェット
表示順序ウィジェットは、イメージ レイヤー内の重なり合う画像の表示順序を設定できます。Image Server から取得したイメージ レイヤーや画像コレクションのイメージ レイヤーで使用でき、モザイク データセットのオーバーラップしている領域のピクセルをどのように順序付けして表示するかを指定できます。
機能強化
マップ ウィジェット
marker:<x>,<y> URL パラメーターを使用することで、地図上にマーカーを配置できるようになりました。本機能も ArcGIS Web AppBuilder の機能を移行したもので、マーカーの位置だけでなく、ラベルやタイトルも設定できます。下の画像では、JR 新宿駅の位置に「新宿駅」というタイトルのマーカーを配置しています。
例: https://experience.arcgis.com/experience/<appID>#widget_1=
marker:139.700900%2C35.68860%3B%3B新宿駅
また、選択ウィジェットやフィルター ウィジェットなどの [マーカー データの追加] アクションを使用して、マップにマーカーを追加することもできます。URL パラメーターを使用してマップにマーカーを配置する方法についてはヘルプ「URL パラメーターの使用」をご参照ください。
エクスポート可能な形式の追加
アプリ上のデータをエクスポートする際、シェープファイル、ファイル ジオデータベース、KML 形式でエクスポートできるようになりました。エクスポートしたデータは zip ファイルとして直接コンピューター上にダウンロードされ、クレジットは消費しません。詳細はヘルプ「データの管理」をご参照ください。
マップ レイヤー ウィジェット
マップ レイヤー ウィジェットで [実行時に生成されたレイヤーのシンボルを変更する] を有効化することで、データの追加ウィジェットや、解析ウィジェットなどを通じて動的に追加されたレイヤーのシンボルを変更できるようになりました。
レイヤーのシンボルを変更することで、生成されたレイヤーをわかりやすく可視化、表現することができます。
凡例 ウィジェット
[レイヤーのカスタマイズ] を有効化し、凡例に表示するレイヤーを選択できるようになりました。地図に多数のレイヤーが含まれている場合でも、必要な情報のみを画面上で表示することができます。
描画ウィジェット
フリーハンド ツールが追加され、地図上に任意の形状でポリラインやポリゴンを描くことができるようになりました。さらに、描画後のシンボル変更や形状変更がサポートされたほか、同じジオメトリーであれば複数のフィーチャを一括で編集できるようになりました。
Business Analyst ウィジェット
ウィジェットから到達圏を作成する際に、カスタム移動モードを使えるようになりました。これにより例えば日本国内において、自動車到達圏を作成する場合に、高速道路を使用しない商圏作成が可能になりました。
最後に
今回のアップデートでは 2026 年第 1四半期にリタイアが予定されている ArcGIS Web AppBuilder からの移行機能や ArcGIS GeoBIM 関連の 3 つのウィジェットを含む、いくつかの新機能と機能強化が実装されました。
Experience Builder はArcGIS における Web アプリ構築ツールとして今後も成長を続けていく予定ですので、ぜひご活用ください。
また、ArcGIS Web AppBuilder からの移行については以下のドキュメントをご参照ください。
- ArcGIS Web AppBuilder から ArcGIS Experience Builder に移行しよう – 両製品の違いと移行のメリット
- ArcGIS Web AppBuilder から ArcGIS Experience Builder に移行しよう – ウィジェットについて
- ArcGIS Web AppBuilder から ArcGIS Experience Builder に移行しよう – Web アプリのデザイン
Experience Builder の新機能の詳細についてはこちらのブログ (英語) をご参照ください。