はじめに
ArcGIS 製品を利用されているなかで「ArcGIS Enterprise」という製品名を目にしたことが多いかと思います。本記事では ArcGIS Enterprise の概要や ArcGIS Enterprise を構成するコンポーネントについて解説していきます。
ArcGIS Enterprise とは
ArcGIS Enterprise は、マップや解析機能などの GIS コンテンツを Web サービスとして共有できる GIS サーバーです。ArcGIS Online と同等の GIS コンテンツを管理・共有・利用するためのポータル サイトやマップ・アプリケーションの作成機能を提供します。オンプレミス環境やクラウド環境、仮想環境で GIS プラットフォームの基盤を構築する役割を果たすため、柔軟に構成を調整することができ、社内ネットワーク内での安全な利用が可能になります。
図 1: ArcGIS Enterprise の位置づけ
また、ArcGIS Enterprise は 1つの製品ではなく下図のように、ArcGIS Web Adaptor、Portal for ArcGIS、ArcGIS Server、ArcGIS Data Store、 の 4 つのコンポーネントから構成されています。加えてオプションとして、エンタープライズ ジオデータベースを構築し、連携することも可能です。
図 2 : ArcGIS Enterprise の基本構成
Portal for ArcGIS
Portal for ArcGIS は GIS コンテンツの管理や共有、Web アプリケーションの作成を可能とするポータル サイトを構築するコンポーネントとなります。構築されたポータル サイトは各種コンテンツをアイテムとして管理のほか、Map Viewer、Scene Viewer や ArcGIS Experience Builder 等の ArcGIS Apps (ArcGIS Enterprise Apps) を提供しています。
また、ポータル サイトの管理者は、テーマ、ホーム ページ、ギャラリーなどを構成することで、組織に合ったポータルをカスタマイズできます。組織をカスタマイズする以外にも、各メンバーにユーザー タイプとロールを割り当てることで、組織内のコンテンツへのアクセスや作業の方法を管理でき、メンバーのエクスペリエンスも向上できます。
図 3 : 構築されたポータル サイトと利用可能な ArcGIS Enterprise Apps
ArcGIS Server
ArcGIS Server は、GIS コンテンツを Web サービスとして公開するための Web GIS エンジンです。クライアントからのリクエストに応じた、地図の描画やルート検索、ジオプロセシング サービスなど様々な解析処理など、GIS の処理を行います。また、フィーチャやシーンといった GIS コンテンツを Web サービスとして公開・共有をします。このコンポーネント単体でも、マップの配信や解析を行うことができますが、Portal for ArcGIS と統合(フェデレート)することで、より強力な Web GIS のポータル サイトが構築できます。
ArcGIS Data Store
ArcGIS Data Store は Portal for ArcGIS で公開する Web サービスの GIS コンテンツを格納するデータベースです。データベースの専門知識がなくても、設定と構成を簡単に実行して、さまざまなデータ ストアを作成できます。Portal for ArcGIS へファイルをアップロードしてサービスを公開するとき、ArcGIS Server で Web サービスの公開・共有をされるフィーチャやシーンなどの GIS コンテンツのデータを ArcGIS Data Store に格納します。
ArcGIS Data Store では、設定および構成機能を利用して、下記タイプのデータ ストアを作成できます。
- リレーショナル データ ストア : ArcGIS Enterprise の Map Viewer Classic または ArcGIS Pro で実行される標準フィーチャ解析ツールからの出力として作成されるホスト フィーチャ レイヤーを含め、組織のホスト フィーチャ レイヤー データを格納
- タイル キャッシュ データ ストア : ホスト シーン レイヤー用のキャッシュを格納
- 時空間ビッグ データ ストア : フェデレートされた ArcGIS GeoEvent Server サイトから取得されたリアルタイムの観測データをアーカイブし、ArcGIS Indoors や ArcGIS Field Maps など、位置情報の共有に依存するアプリを使用して記録された場所を格納
- グラフ ストア : ポータルのフェデレートされた ArcGIS Knowledge Server サイトのナレッジ グラフを格納
- オブジェクト ストア : ホスト フィーチャ レイヤー内のレイヤーのクエリ応答をキャッシュ
図 4 : ArcGIS Server と 各種 ArcGIS Data Store
ArcGIS Web Adaptor
ArcGIS Web Adaptor は Portal for ArcGIS と ArcGIS Server の Web サービスを利用するためのアクセス ポイントを Web サーバーに作成します。組織の Web サーバーに配置するコンポーネントで、ポータル サイトへの入口を用意するために使われます。Web サーバーをポータル サイトに導入することにより、GIS サービスを使用する Web アプリケーションをホストできます。また、Web サーバー経由の ArcGIS Server へのアクセスが可能になるため、Web サーバー側の認証プロセス (シングル サインオンやその他の認証形式) を ArcGIS Server に組み込むことが可能になります。
エンタープライズ ジオデータベース (オプション)
ジオデータベースは、Esri が GIS データを格納するために考案した ArcGIS の標準データ フォーマットです。従来の GIS データ フォーマットであるシェープファイルに比べて、ArcGIS の機能を最大限に活用することができます。また、エンタープライズ ジオデータベースでは RDBMS にデータを格納します。ArcGIS Pro を使用することでエンタープライズ ジオデータベースのデータをサービスのデータソースとして公開できます。
さいごに
ArcGIS Enterprise の概要、および各コンポーネントについてご紹介しました。本記事では、ArcGIS Enterprise は 4 つのソフトウェア コンポーネントと、オプションでエンタープライズ ジオデータベースから形成される GIS サーバー製品であるということがご理解いただけましたら幸いです。
関連リンク
ESRIジャパン 製品ページ
米国 Esri 製品ページ
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