はじめに
2026 年の紅葉は、いつ、どこから始まるのでしょうか。
今回は、気象庁の生物季節観測「かえで紅葉」の 1993 年から 2025 年までのデータを使い、ArcGIS Pro で 2026 年の紅葉日を予測しました。過去 30 年以上の記録から観測地点ごとの紅葉日を予測し、その結果を日本全国の地図として表現しています。
過去の記録から予測した 2026 年の紅葉は、全国でどのように移り変わっていくのでしょうか。まずは、完成した予測マップをご覧ください。
本記事における「かえで」は、気象庁の観測方法にならい、主に「いろはかえで」を指します。また「紅葉日」は、標本木全体を眺めたときに、大部分の葉の色が紅色に変わった状態となった最初の日を指します。
前回の記事では、1955~1964 年と 2015~2024 年の「かえで紅葉」の観測データを地図上に可視化し、約 70 年前と現代で紅葉時期がどのくらい変化したのかをご紹介しました。詳細は、「70 年前と現代はどのくらい違う?ArcGIS Pro で『カエデ』の紅葉時期を地図上に可視化してみた」をご参照ください。
2026 年の紅葉予測マップを見てみよう
こちらが、2026 年のかえでの紅葉予測を示したマップです。100 回のシミュレーション結果の中央値を可視化しました。
予測方法の詳細については、「2026 年の紅葉日の予測方法」をご参照ください。
地図では、予測された紅葉日に応じて赤色から黄色のグラデーションで表現しています。全国を見渡すと、北海道や東北地方から紅葉が始まり、次第に関東、中部、近畿、中国、九州地方へと移っていく様子が見えてきます。
北海道では、10 月から 11 月にかけて紅葉を迎え、札幌では 11 月 13 日頃に紅葉を迎えると予測されました。東北地方から北陸地方にかけては、11 月後半に紅葉日を迎える地域が多く、仙台では 11 月 24 日頃、新潟では 11 月 28 日頃という予測になりました。
一方、関東以西の平野部では、12 月に紅葉を迎える地域が多くなっています。東京、名古屋、広島では 12 月 1 日頃、大阪では 12 月 4 日頃、福岡では 12 月 6 日頃に紅葉日を迎える予測となりました。
山間部では周辺の平野部より早く紅葉すると予測されています。大雪山周辺では 10 月 3 日頃、蔵王山周辺では 10 月 25 日頃となりました。ただし、例えば大雪山では、例年 9 月中旬頃から紅葉が進むと案内されており、一般に知られている実際の紅葉時期よりも遅く予測されている場所もあります。
実際の紅葉日は、その年の気象条件などによって前後する可能性があります。また、今回使用した観測地点は平地に多く、特に山間部など観測地点のない場所は周辺のデータから推定しているため、比較的大きな誤差が生じている可能性があります。地図上の日付は一つの目安としてご覧ください。
紅葉が早く進む場合の予測
こちらは、モデルが示す中央 90%予測区間のうち、早い側の日付を示したマップです。
予測の中央値と比べると、大雪山周辺では 9 月 23 日頃、蔵王山周辺では 10 月 18 日頃となり、山間部を中心に紅葉日が早まっていることが分かります。
この地図は、全国の予測日を一律に同じ日数だけ早めたものではありません。予測の幅が比較的小さい地域では、予測の中央値との差も小さくなります。一方、観測地点が少ない地域や、周辺の観測地点とは地理的な条件が大きく異なる地域では、その差が大きくなる場合があります。
早い側の予測が中央値より正確というわけではありませんが、観測地点が少なく、推定が難しい山間部では、紅葉日を推定する際の一つの目安になります。
2 つの地図を見比べながら、地域によって紅葉日がどの程度前後する可能性があるのかを確認してみてください。
2026 年の紅葉日の予測方法
今回の予測には、気象庁の生物季節観測データのうち、1993 年から 2025 年までの「かえで紅葉」の観測結果を使用しました。期間中のデータの欠損が少ない 46 の観測地点を対象に、ArcGIS Pro で地点ごとの時空間キューブを作成し、紅葉日の情報を時系列で扱えるようにしました。
その後、時空間予測ツールセットを使って、観測地点ごとに 2026 年の紅葉日を予測しました。予測には複数の手法を試し、位置による予測評価ツールを使って、実際の観測値との誤差が小さかった予測手法を地点ごとに適用しています。
次に、観測地点ごとの予測値から全国の分布を推定するため、Geostatistical Analyst エクステンションの EBK 回帰予測ツールを使用して、100 回のシミュレーションを行いました。説明変数には、CHELSA-monthly から作成した 1993 年から 2021 年の 10 月の平均気温を使用しています。これは、各年の 10 月の平均気温をセル (場所) ごとに集計し、29 年間の平均を求めたものです。
10 月の平均気温には、緯度による南北差だけでなく、標高に伴う気温差も表れます。そのため、気温データを通じて地理的な違いを間接的に反映しながら、観測地点のない場所を含む全国の紅葉日を推定しています。
その後、地球統計レイヤー → ラスター ツールを使用し、100 回のシミュレーションのうち、中央値と、中央 90% 予測区間の早い側に当たる 5% 分位点を「早い側の予測」として出力しました。
予測結果を見るときの注意点
地図上の日付は、観測データと平均気温を基に推定した値です。交差検証では予測値と実際の観測値の差は、平均絶対誤差で約 7 日、二乗平均平方根誤差 (RMSE) で約 8 日でした。そのため、地図の日付は一日単位の正確な予報ではなく、おおむね 1 週間程度の幅を持つ目安としてご参照ください。
また、特に山岳地域では観測地点が限られており、実際の観測地点よりも大幅に高い標高まで予測範囲を広げているため、交差検証で確認した精度がそのまま当てはまるとは限りません。
なお、今回の推定では、森林限界やカエデ類の詳細な分布域を考慮していません。そのため、カエデ類の生育が想定されない高標高域や、落葉広葉樹が少ない場所にも、紅葉日が算出されている場合があります。
おわりに
今回は、気象庁の生物季節観測データを利用して、2026 年のかえでの紅葉日を予測し、その結果を日本全国の地図として可視化しました。札幌では 11 月中旬頃、仙台や新潟では 11 月下旬頃、関東以西の主要都市では 12 月上旬頃に紅葉日を迎えるという予測になりました。
また、予測される紅葉時期には幅があるため、予測の中央値に加えて、紅葉が早く進む場合の予測も作成しました。特に山間部では、2 つの地図を見比べることで、紅葉日が前後する可能性を含めて、時期をより幅広く捉えることができます。
ArcGIS Pro では、過去の時系列データから将来の値を予測し、地点ごとの予測結果から面的な分布を表現できます。今回は、観測地点ごとに予測した 2026 年の紅葉日を全国へ広げることで、紅葉が日本列島を移り変わっていく様子を一枚の地図に表しました。
今回の結果は、2026 年秋の気象予報を反映したものではありませんが、紅葉狩りの時期を考える際の一つの目安になるかもしれません。秋を迎えたら、身近な木々の色づきや各地の紅葉の様子と、今回の予測マップを見比べてみるのも面白そうです。
今回の予測マップも参考に、2026 年の紅葉をぜひ楽しんでください!
参考
- 本記事で紹介したマップは気象庁の生物季節観測「かえで紅葉」を基に、ArcGIS Pro を使用して作成しました。予測には、CHELSA-monthly から作成した 1993 年から 2021 年の 10 月の平均気温を使用しています。
- ArcGIS Online 製品ページ
- ArcGIS Pro 製品ページ
- Geostatistical Analyst エクステンション
- ArcGIS ユーザーのための内挿ガイド: 内挿の基礎知識
- 70 年前と現代はどのくらい違う?ArcGIS Pro で『カエデ』の紅葉時期を地図上に可視化してみた

