道路交通オンラインサービス 道路通行実績情報で実現できる、災害時のリアルタイムな状況把握と活用方法をご紹介

2021 年 4 月に、ArcGIS 上でリアルタイムに把握できる道路交通情報として Online Suite 道路交通オンラインサービス 道路通行実績情報(以降、道路通行実績情報)をリリースしました。

道路通行実績情報は、トヨタ自動車株式会社のコネクティッドカーから得られるカープローブデータをもとに、直近 24 時間及び直近 3 時間の交通状況(通行実績および通行量)をリアルタイムに可視化するオンライン サービスとして配信するものです。

今回は、災害発生時に道路通行実績情報を用いることで、どのように被災地の状況をリアルタイムに把握でき、防災・BCP 分野でどのように活用できるかについて、実際の災害時に可視化した道路通行実績情報をもとにご紹介いたします。

令和 2 年 7 月球磨川豪雨の概要

2020 年 7 月 4 日未明から朝にかけて、熊本県の球磨川流域では梅雨前線の影響により線状降水帯が形成され、時間雨量 30mm を超える激しい雨が 8 時間にわたり降り続きました。特に熊本県人吉市を中心とする中流域では浸水被害や家屋の倒壊、橋梁の流失が相次いで発生し、未曽有の被害となりました。

以降、人吉市周辺(赤枠の地域)がこの災害時に、道路通行実績情報でどのように見えていたか確認していきます。

直近 24 時間の通行実績

道路通行実績情報は、約 1 時間ごとに更新される各道路の直近 24 時間の通行実績を把握できます。以下の図は、2020 年 7 月 2 日~7 月 4 日の間における、1 日単位の通行実績情報を主要道路(高速道路、国道)のみ可視化した例です。

青色は通行実績がある道路、赤色は通行実績の無い道路です。こちらを確認すると、平時は常に通行実績のある各道路において、7 月 4 日に一部の道路の通行実績が無くなっていることが把握できます。7 月 4 日の未明より発生した豪雨の影響を受け、通行実績に影響が生じたことが考えられます。

直近 3 時間の通行実績

もう少し詳細に、道路通行実績情報を確認してみます。道路通行実績情報は、直近 24 時間の道路通行実績情報に加え、直近 3 時間の道路通行実績情報もリアルタイムに把握可能です。以下は、7 月 2 日、3 日、4 日の日中における直近3時間の通行実績の変化を 1 時間毎に可視化したものです。豪雨発生後の 7 月 4 日は、南北に延びる高速道路では日中のほとんど通行実績が無く、また東西に延びる国道 214 号線においても、西側の一部道路など各時間帯で常に通行実績の無い道路が見受けられます。

通行実績情報と浸水想定図との重ね合わせ

他の GIS データと通行実績情報を重ね合わせ、7 月 4 日に通行実績無しとなっている道路の具体的な状況について考察をします。国土地理院が提供する「浸水推定図 球磨川水系球磨川 人吉市周辺(2020 年 7 月 4 日 13 時作成)」を重ね合わせてみると、球磨川周辺の国道 214 号線は、浸水想定の範囲が重なっており、道路通行実績が無いことが分かります(黄枠部分)。

この道路部分については、実際に浸水等の災害による影響を受け、通行実績不可であった可能性が考えられます。このように、道路通行実績情報を用いることで、災害などの影響により通行実績が無くなった道路の確認など、被災地の状況をリアルタイムに把握することが可能となります。

通行実績情報の活用例:ルート検索時のバリアとしての利用

災害時に把握した通行実績の無い道路位置の活用例として、避難経路などルート検索をする際の、バリア(回避位置の設定)としての利用が挙げられます。

通行実績の無い道路の位置にバリアを設定することで、災害などの影響を受けている可能性のある、通行実績の無い道路を回避する条件でルート検索を行うことができます。災害時における避難経路や救援物資の輸送経路を検討するうえで、このように道路通行実績情報を有効に活用することができます。

今回は、道路通行実績情報を災害時での活用をテーマにご紹介しましたが、物流業務やビジネス分野など、様々な用途での活用が期待できるサービスとなっています。

現在 Online Suite 道路交通オンラインサービスは、リアルタイムな通行実績情報を配信していますが、通行量や通行速度が分かるサービスをリアルタイムに提供できるように、計画を進めています。

サービスの拡張情報や活用方法など、今後も随時情報を発信していきますので、どうぞご期待ください。

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