プローブデータを用いた鮮度の高い道路統計データ「ArcGIS Stat Suite 道路交通履歴統計」のご紹介

ESRIジャパンは 2021 年 4 月 21 日より、トヨタのコネクティッドカーから得られるプローブ情報を活用した各データ製品を、ArcGIS ユーザーに向けて提供を開始しています。今回は、そのうちの一つであるESRIジャパン データコンテンツ ArcGIS Stat Suite 道路交通履歴統計 (以下、道路交通履歴統計) について、分析例を交えながらご紹介します。道路交通履歴統計は、一般道も含む各道路の交通状況を、最新の情報として把握可能な道路統計データです。

各道路における交通状況の把握

普段、私たちが生活している周辺にある道路を思い浮かべてみると、大通りや生活道路など各道路において通行量や混雑状況は様々です。また、時間帯や平日・休日によってもその状況は異なります。道路交通履歴統計を用いて、その様子を確認してみます。下の図は、埼玉県三郷市と千葉県流山市の境目にある「流山橋」を中心に、道路交通履歴統計の「平均車速」を地図上に可視化した例です。

三郷と流山の市街地を結ぶ「流山橋」 (白点線枠) は、江戸川に架かる橋が周辺に無いため、交通が集中し渋滞の発生するポイントとして周辺の住民は良く知るところですが、データからもその様子が見て取れます。時間帯別に確認すると、午前中 (6 時台 ~ 13 時台) は流山市から三郷市へ向けて混雑が目立ち、夜間 (18 時台 ~ 21 時台) は逆に、三郷市から流山市の方向に混雑していることが把握できます。

道路交通履歴統計は、統計指標として「通行台数」と「平均車速」に関する情報を平日・休日かつ時間帯別に区分し収録する道路統計データです。このように、日本各地における各道路の交通状況を把握することができます。

※尚、流山橋の約 2.5 km 北側に、江戸川に架かる新しい橋「三郷流山橋有料道路」が開通に向け現在建設中です。有料の新しい橋が開通することで流山橋の渋滞が解消されるのか、道路交通履歴統計にて確認したいところです。

周辺の変化が交通状況に与える影響の確認

各道路の交通状況は、地域の土地利用や都市構造に影響を受け、変化することが考えられます。大規模な集客施設、例えば大型のショッピングモール等の立地についても、周辺の各道路に影響を与えることが想像されますが、「イオンモール白山」は 2021 年 7 月 19 日に石川県白山市に立地した大型の商業施設です。イオンモール白山オープン前の 4 ~ 6 月とオープン後の 7 ~ 9 月の通行台数がどのように変わったか、道路交通履歴統計の「通行台数」の指標にて、その立地の影響を確認してみます。以下の図は、2021 年 4 ~ 6 月の通行台数 (休日) に対する、2021 年 7 ~ 9 月の通行台数 (休日) の比率を地図上に可視化した結果です。

イオンモール白山周辺の道路にて、オープン前後で休日の通行量が増加していることが見て取れます。特に、施設の北側に位置する大通りよりも、東側や南側の道路のほうが影響を受けており、少し離れた一般道 (紫点線枠) でも通行量が増加していることが分かります。

道路交通履歴統計は、3カ月に1度のペースで、常時取集されるトヨタのプローブ情報を集計・統計化してご提供する製品です。時期の異なるデータを比較することで、土地利用や都市構造の変化による各道路の影響を、タイムリーに分析・確認することが可能です。

交通の流れによる各地域の関連性の分析

道路交通履歴統計が各道路の通行台数・平均車速を道路方向 (上り/下り) ごとに格納していることは、前半の流山橋の例でお示ししたところです。本項ではもう少しマクロな視点で、各地域を走る車両が全体としてどの方向に向かっているか、その分布を確認することで各地域及び地域間における交通の流れを把握できないか試みます。今回は、道路交通履歴統計の各道路を道路長と通行台数を重みとした方向ベクトルとみなし (方角は起点・終点より計算)、3次メッシュごとに集約した合成ベクトルを作成することで、各地域の交通の流れを地図上に可視化してみました。矢印シンボルの向きは合成ベクトルの方角、矢印シンボルの色は合成ベクトルの大きさを表現しています。

上の図は、東京都中心部周辺にて、2022 年 4 ~ 6 月の平日午前の通行台数を基に可視化した例です。周辺の各地域から都心中心に向けて交通が流れていることが確認でき、都心からある程度距離が離れるにつれて、ベクトルの大きさや方向に統一性が無くなっていく様子が見て取れます。

続けて同地域にて、2022 年 4 ~ 6 月の平日夜間の通行台数を基に可視化した例です。午前中とは逆に、都心中心から郊外に向けて交通が流れていることが確認できます。このように交通の流れを地図上で可視化することで、交通の視点から各地域の傾向や関連性を把握することができます。

まとめ

本ブログで紹介した内容はあくまでも一例となりますが、道路交通履歴統計を活用することで、各道路の交通状況の把握や分析に役立てることができます。ArcGIS ユーザー皆様のアイデア次第では、さらなる画期的な活用方法が発見されるかもしれません。本データ、道路交通履歴統計が皆様の業務や研究にお役立ていただければ幸いです。尚、トヨタのプローブデータを活用した製品には、各道路の混雑パターンを考慮した道路ネットワーク解析が可能な「ArcGIS Geo Suite 履歴交通量付き道路網」、各道路の通行台数・平均車速をリアルタイムに把握可能な「Online Suite 道路交通オンラインサービス 道路通行実績情報」もございます。今後、トヨタのプローブデータを活用した各製品の紹介や分析活用例を随時発信していきますので、どうぞご期待ください。

関連リンク

フォローする