【Esri Community Blog】
本ブログは、Web GIS の基盤となる ArcGIS Enterprise で公開できる主要な Web サービスの概要や主な機能に関して紹介するシリーズです。
今回第四回目はシリーズ最後となる シーン サービス編となります。
- マップ サービス編
- ベクター タイル サービス編
- フィーチャ サービス編
- シーン サービス編(今回)
今回の記事ではシーン サービスの概要と種類、シーン レイヤーの構造について紹介します。
シーン サービスとは
Living Atlas で公開されている3D 都市モデル シーン
シーン サービスは、これまで紹介してきたような 2次元データを提供するマップ サービス、フィーチャ サービス、ベクター タイル サービスに対して、3 次元データを上記のようなブラウザで表示できる Web シーンとして提供します。
ArcGIS は Open Geospatial Consortium(OGC) にも準拠しており、3D GIS データを扱うための各種フォーマットをシーン サービスと呼ばれる I3S 形式で提供しています。
ArcGIS Server の各種サービスとは少し異なり、シーン サービスは ArcGIS Pro を基盤とする Web サービスとなります。そのため、公開するためのデータの作成や編集には、基本的には ArcGIS Pro が必要になります。
また、ArcGIS Enterprise でシーンサービスを公開する場合には、3D データをキャッシュとして保存するために、ArcGIS Data Store のリレーショナル データ ストアに加えて、タイル キャッシュ データ ストアの構成が必要になります。
シーン レイヤーの種類
シーン レイヤーには I3S (Indexed 3D Scene layer) に準拠した以下の 6つのレイヤー タイプがあります。
・3D オブジェクト : 建物など、3 次元で明示的にモデル化されたオブジェクトを視覚化
・ビルディング : 壁や家具などを含む詳細な内部構造をもつ建物を視覚化
・3D メッシュ :大量の画像データを、建物や樹木、標高情報を含むテクスチャ メッシュとして統合
・ポイント : 大量のポイント データを、3Dシンボルを使用して表示可能
・点群 : 大量の点群データを表示するために最適化されたレイヤータイプ
・ボクセル : 多次元の空間情報と時間情報を視覚化
各シーン レイヤー タイプに応じて利用できる機能は様々で、編集をできるかできないか、といったところでも違いが出てきます。
参考 : シーン レイヤーとは—ArcGIS Pro | ドキュメント
シーン サービスの利用
今回は基本的な機能として、 Scene Viewer を利用したシーン レイヤーの表示、シンボルの変更を紹介します。
今回は Esri が公開している Learn ArcGIS 「シーンの作成」内で利用されている Portland Buildings というレイヤーを利用します。
Scene Viewer で表示すると、以下のように表示されます。
スタイルの変更からシーンのテクスチャを変更することも可能です。
シーンレイヤーの内部構造とキャッシュの更新
次に、シーンレイヤーの内部構造として、ArcGIS におけるシーン レイヤーのデータ構造の基本となる、シーンレイヤー パッケージの構造について紹介します。
レイヤー タイプによって構造で違いはありますが、今回は 3D オブジェクト レイヤーの場合を例としています。その他の構造としては、Esri GitHub の各レイヤー タイプについての詳細ページで確認いただけます。
シーンレイヤー パッケージはシーン サービスを構成する様々な3D データを圧縮された形であり、解凍してみると中身は JSON やバイナリ ファイルで構成されています。多くの場合、各オブジェクトはノードという単位でグループ化され、ツリー構造を形成しています。
ノードのツリー構造
引用 :
https://github.com/Esri/i3s-spec/blob/master/docs/img/BoundingVolumeHierarchyTree.png
シーンレイヤー パッケージを、 ArcGIS Enterprise を構成する ArcGIS Server に公開すると、ArcGIS Data Store のタイル キャッシュ データ ストア内に、キャッシュとして各ノードの中身が保存されます。
エンタープライズ ジオデータベースなど、データソースの格納場所が ArcGIS Data Store と別途存在する場合は、以前紹介したフィーチャ サービスとは異なり、ArcGIS Data Store 内にキャッシュが格納されるため、Portal for ArcGIS のアイテム上では全てホスト シーン レイヤーとして扱われます。
ここで注意が必要なこととして、この方法で公開されたホスト シーン レイヤーは、ジオデータベース側のデータを変更したとしても、再度キャッシュを更新するまでは変更が反映されません。
この操作はアイテム詳細の設定タブから行うことが可能です。
終わりに
全 4 回にわたった 『ArcGIS Enterprise で公開できるサービス』シリーズは今回で終了となります。
このシリーズでは、 ArcGIS Enterprise が提供する主要なサービスを紹介しました。これまで利用されていた様々なサービスについて、理解を深めることができていましたら幸いです。
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