ArcGIS for Desktop で ALOS-2 データを取り込む

今年 5 月に日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)により打ち上げられた陸域観測衛星 ALOS-2(だいち 2号)は、現在試験運用のフェーズに入っていますが、この夏多発している豪雨災害被災地の観測にも活用されており、JAXA のだいち防災WEB でも取得された画像を閲覧できるようになっています。そして先日、JAXA EORCウェブサイトにて同衛星が撮影した実画像のサンプルプロダクトが公開されました。このデータは JAXA CEOS というフォーマットで提供されており、これを ArcGIS で見てみたい、というユーザ様の声にお応えし、現状の ArcGIS で可能な取り込み方法を紹介します。

Alos2_2

ArcGIS での取り込み方法
JAXA CEOS フォーマットの ALOS-2 データは、現行の ArcGIS では主に二つの方法で取り込み可能です。一つは先代の ALOS PALSAR データ用の JAXA CEOS フォーマット直読み機能を使用する方法、もう一つは VRT というファイルを作成する方法です。

JAXA フォーマット直読み機能の利用
実は ALOS-2 データは、フォーマット自体は先代の ALOS PALSAR データと大きな変わりはなく、ファイル名の付け方のみが変わっています。したがって、ALOS-2 のファイルが JAXA フォーマットとして認識されるように ArcGIS 側の設定を少し調整すれば読み込みが可能になるのです。手順は以下のようになります。

1. ArcMap を起動します。
2. 
メニューから [カスタマイズ] → [ArcMap オプション] を選択し、[ラスタ] タブ → [ラスタ データセット] タブ を開いて [ファイル フォーマット] ボタンをクリックします。
3. 
[ラスタ ファイル フォーマット プロパティ] ダイアログで「JAXA」の項目を探し、ファイル拡張子を「*.5gud;*.5rua;*.5rud;*.1gud;*.1rua;*.1rud」に書き換えます。

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4. [ラスタ ファイル フォーマット プロパティ] ダイアログおよび [ArcMap プロパティ] ダイアログでそれぞれ [OK] ボタンを押してダイアログを閉じます。
5. ArcMap を再起動します。
6. 
カタログウィンドウで ALOS-2 データのフォルダをブラウズすると、以下のように各ファイルがリストされているはずです。この中から IMG- ファイルをビューにドラッグ&ドロップすれば表示することができます。

VRT の作成
以前当ブログの記事「ArcGIS Desktop で ALOS(だいち)データを取り込む」で紹介しました VRT ファイル作成ツールを ALOS-2 にも対応できるように改修し、こちら(ArcGIS Online)に共有しました。ALOS-2 データの場合は、「ALOS-2 用 VRT 作成ツール」を使用してください。このツールは JAXA CEOS データセットに含まれる LED- ファイルを入力として .vrt ファイルを出力しますので、これを ArcMap にドラッグ&ドロップするだけで表示することができます。

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当ツールは、ArcGIS 10.2.2 for Desktopで動作を確認しています。サンプルとして提供しておりますので、ESRI ジャパンの通常のサポート対象外です。ご質問は当ページのコメント欄をご利用ください。また、当ツールを使用して生じたいかなる障害についても、ESRI ジャパンは責任を負いませんので予めご了承ください。

ArcGIS for Desktop での使用例
今回 JAXA から公開されているプロダクトサンプルデータは、2 偏波モードのデータですので、HH と HV という二つの画像データが含まれます。JAXA フォーマット直読み機能を使用する場合は、それぞれ別々の画像ファイルとして取り扱われますが、VRT 作成ツールではこれらをコンポジットした状態(HH がバンド1、HV がバンド 2)で表示することができます。せっかくですので、JAXA EORC の K&C モザイクホームページにあるようなカラー表示をしてみましょう。このページの文中に記されているように、赤 = HH、緑 = HV、青 = HH/HV で表示してストレッチするだけですので、ArcGIS for Desktop のラスタ関数で簡単に作成できます。

1. .vrt ファイルを ArcMap に追加します。
2. 
画像解析ウィンドウで画像レイヤ(*.vrt)を選択し、[fx](関数の追加)アイコンをクリックします。
3. 
関数テンプレートエディタの中で[アイデンティティ関数] を右クリック→ [挿入] で、[スペックル除去関数]を追加し、追加されたスペックル除去関数を右クリック→ [挿入] で、[バンド抽出関数] を追加します。
4. 
さらに [バンド抽出関数] を右クリック→ [挿入] で [コンポジットバンド関数] を追加し、[+] アイコンから、[選択した入力のコピーを追加] を選択します。これを二回繰り返し、コンポジットバンド関数に 3 つのバンド抽出関数の枝がぶら下がった状態にします。
5. 
一番上の [バンド抽出関数] を右クリック→ [プロパティ] から[組み合わせ:] を 1 とします。
6. 
二番目の [バンド抽出関数] を右クリック→ [プロパティ] から[組み合わせ:] を 2 とします。
7. 
一番下の [バンド抽出関数] を右クリック→ [挿入] で [バンド演算関数] を追加します。[手法: ] をユーザ関数、[式: ] を B1/B2 とします。
8. 
[OK] ボタンをクリックして関数テンプレートエディタを閉じます。

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これで K&C モザイクホームページにあるようなカラー表示になったはずです。またスペックル除去関数によりノイズが低減されている点もポイントです。

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いかがでしたでしょうか。このように ArcGIS for Desktop では手軽に最新の ALOS-2 データを利用して頂くことが可能です。レベル 1.5 以上のデータなら、地図座標付きで取り込めるので、地図データと重ね合わせてマップを作成したり、画像判読をするような用途には十分活用できそうですね。

■関連リンク
・ALOS 解析研究プロジェクト :http://www.eorc.jaxa.jp/ALOS/index_j.htm
・だいち防災 WEB:https://bousai.jaxa.jp/
・ArcGIS でサポートされているラスタ データセット ファイル形式: http://resources.arcgis.com/ja/help/main/10.2/index.html#/na/009t0000000q000000/
・ArcGIS で利用できるラスタ関数:http://resources.arcgis.com/ja/help/main/10.2/index.html#/na/009t00000044000000/

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