新型コロナウイルスのマップを作成するときに気をつけたいこと

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新型コロナウイルス感染症 (Covid-19) は、2019 年 12 月に最初に特定されて以来、世界中の感染者は 2020 年 5 月 12 日時点で 410 万人を超えており、犠牲者も 28 万人にのぼっています。日本でも緊急事態宣言が発出されましたが、感染者は日々増加しています。そのような中で、新型コロナウイルスに関連した様々な地図をニュースなどで目にする機会が増えているのではないでしょうか。

一方、これから地図を作成しようとしている方もいらっしゃるかもしれません。今回は新型コロナウイルスのマップを作成するときに気をつけたいポイントをシンボル設定に注目していくつかご紹介します。

等級色

主題図を作成するときに非常によく使われるのは等級色です。この手法は、的確に使用されなければ見る人に誤解を与えてしまいます。以下のマップは、2020 年 4 月 20 日に日本国内で確認された新型コロナウイルスの感染者数を表しています。

このマップは感染者数を等量で分類し色分けを行っています。しかし、各地域の面積や人口が異なるため単純に比較することはできません。2 月に緊急事態宣言が発出された北海道と東京都はともに最も赤い色で表現されています。しかし、4 月 20 日の時点で、北海道は約 430 人、東京都は 3000 人以上と人数に差がありますが、等量で分類すると同じグループに分類されるため、北海道の感染者数も東京都と同じくらいの人数であるように見えてしまいます。そのためどのように分類するか、閾値をどうするか検討する必要があります。

また東京都の感染者数は非常に多いですが、東京都の人口に対してどれくらいの割合になるのでしょうか。このマップからは判断できないため以下のように感染者数を人口で正規化します。

先述の感染者数のマップとこのマップとの違いは、合計値ではなく比率が使用されている点です。人口 10 万人の都市での 10 例は人口 100 人の町での 10 例とは根本的に異なる状況であるため、このように正規化表現を行い、地域間の違いを容易に比較できるようにしています。この表現方法によって、石川県、福井県、高知県など感染者数では最も多いグループに分類されなかった県で感染率が高くなっていることがわかります。

等級色以外の表現方法も見てみましょう。

ドット密度

上記のマップでは、ドット密度を使用して感染者 10 人に対し 1 ドットで表現しています。東京都周辺にドットが密集しており感染者が多いことがわかります。ただし、ドットの配置はランダムで正確な位置を表しているわけではありません。そのため、見る人によってはドットの地点で感染者が確認されたと誤解される可能性があります。

比例シンボル

等級色やドット密度でマップを表現すると、面積が大きい北海道は目につきますが、沖縄はあまり目立ちません。比例シンボルを使用することで、沖縄のように面積が小さいエリアも意識しやすくなります。しかし、東京都周辺を見るとシンボルが重なって見えてしまいます。比例シンボルを使用する場合は、このようなシンボルの重複に注意が必要です。

3D

3D で表現する場合は、どうでしょうか。東京都が柱のように高く表示され、東京都の感染者数が突出していることが一目でわかります。ところが東京都の諸島も同様に表現されてしまい、あまり見やすくはありません。また遠近法により遠くのエリアが低く見えてしまいます。

以上のように、新型コロナウイルスの感染者数をマップで表現するにしても、様々な表現方法を選択できます。ArcGIS ではこれ以外にもさまざまな地図表現が可能です。どのような表現にするかによって、見る人に違った印象を与えるので、マップを作成する際にはどのような見せ方が適切か検討していただければと思います。

また、この新型コロナウイルスが一日も早く収束することを切に願っています。

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