目次
はじめに
上の画像は日本人がたどり着いた最も深い場所である小笠原海溝の最深部 (暫定 9,801m) の様子を ArcGIS Pro のレイアウトを使用して 3D ジオラマとして可視化したものです。
ArcGIS Pro では様々なツールを使用しデータを可視化、解析できるだけでなく、レイアウトを活用してデータをより魅力的に表現することができます。
本シリーズでは、3 本のブログにわたって ArcGIS Pro のレイアウトで海底地形の 3D ジオラマを作成する方法についてご紹介します。第 3 弾にあたる今作ではこれまでに作成した海底地形の 3D レイアウトに情報やデザイン要素を追加し、3D ジオラマとして完成させます。
ぜひみなさまも 3D ジオラマの作成に挑戦してみてください。
使用データの詳細や 3D シーン作成の流れは第 1 弾で詳しく解説しています。また、レイアウトの作成については第 2 弾で詳しく説明しています。作成を始める前にぜひこちらもご参照ください。
海底地形 3D ジオラマの作成方法
ステップ 1: 水面のポリゴンを作成
プロジェクトを開き、3D ジオラマの作成を開始します。3D ジオラマとしての完成度を高めるため、海面にグラフィックスを追加し波のような表現を設定します。
- 第 1 弾で作成した「海底地形 3D ジオラマ」プロジェクトを開き、レイアウトを表示します。
- [海面] レイヤーが非表示になっている場合は、[コンテンツ] ウィンドウでチェックボックスをクリックして表示します。また、誤操作によってレイアウトが崩れないように鍵マークをクリックし、作成済みのすべてのコンテンツをロックします。
- [挿入] タブの [グラフィックスとテキスト] で詳細をクリックし、[ポリゴン] をクリックします。
- [海面] レイヤーに重なるように四角形のポリゴンを描画し、[コンテンツ] ウィンドウで「水面」に名前を変更します。
- [水面] ポリゴンを右クリックし、[頂点の編集] をクリックします。側面のレイヤーとずれている箇所がある場合は、既存の頂点を移動して調整します。
- 画面下部のツールバーの [追加] をクリックし、各辺の中点に頂点を追加します。
- 任意の頂点間のポリゴンの枠線をクリックし、[セグメントの変更] → [ベジェ曲線に変更] をクリックします。
- ガイド ラインの青丸をドラッグして移動し、ほどよく枠線が波打つように調整します。
- 手順 7、8 を各頂点間で行い、[水面] ポリゴン全体を波打つように表現して、ツールバーの [完了] をクリックします。
頂点を共有する他のガイド ラインを動かしたくない場合は、Ctrl キーを押しながらドラッグするとそのガイドラインのみを移動できます。
ステップ 2: 水面のテクスチャーを設定
水面のポリゴンのシンボルに画像を設定し、海を切り出したように見える設定をします。
- [水面] ポリゴンの [エレメント] ウィンドウを開き、 [シンボル] をクリックします。
- [レイヤー] 内の [ソリッド塗りつぶし] をクリックして [ピクチャ塗りつぶし] を選択します。
- [ピクチャ] をクリックし、ローカル フォルダーから任意の水面風の画像を追加します。本記事では Unsplash から画像を取得し、使用しました。
- ポリゴンを 1 枚の画像で塗りつぶすため、[表示設定] の [サイズ] を「1000 pt」に設定します。
- [コンテンツ] ウィンドウで [海面] レイヤーを非表示にし、水面の描画を確認します。
- 左右の側面のレイヤーと水面に隙間がある場合は、側面のレイヤーの頂点を追加、編集して、隙間を埋めます。
頂点を追加、編集する手順はステップ 1 をご参照ください。
ステップ 3: 3D ジオラマに漂流区分帯のラインとテキストを追加
ラインとテキストをレイアウトに追加し、漂泳区分帯をわかりやすく表現します。
漂泳区分帯にはいくつかの解釈がありますが、本記事では環境省「海洋生物多様性 保全戦略」を参考に作成します。
- [コンテンツ] ウィンドウでチェックボックスをクリックして、以下の 3D レイヤーを表示します。
- 表層
- 中層
- 漸深層
- 超深海層
- [挿入] タブの [グラフィックスとテキスト] で詳細をクリックし、[ポリゴン] を追加します。
- 外側が [表層] レイヤーに沿うように、「く」の字型に引き延ばした四角形のポリゴンを描画します。
- 3D ジオラマの角とポリゴンの角がずれている場合は、ポリゴンを右クリックして、[頂点の編集] をクリックし、位置を調整します。
- [コンテンツ] ウィンドウで [ポリゴン] の[プロパティ] から [エレメント] ウィンドウで [シンボル] をクリックします。
- [レイヤー] タブを開き、[ソリッド ストローク] のチェックボックスをオフにします。また、[ソリッド塗りつぶし] をクリックし、[グラデーション塗りつぶし] を選択します。
- [表示設定] のドロップダウンを展開して [配色プロパティ] をクリックし、[配色エディター] を開きます。
- [+ (色の追加)] ボタンを押してピンを 1 つ追加し、それぞれのピンを以下のように設定して [OK] をクリックします。
- 左のピンをクリックして選択
- 色: 白 (1 番左の列の最上部)
- 透過表示: 100%
- 位置: 0%
- 中央のピンをクリックして選択
- 色: 白 (1 番左の列の最上部)
- 透過表示: 0%
- 位置: 50%
- 右のピンをクリックして選択
- 色: 白
- 透過表示: 100%
- 位置: 100%
- 左のピンをクリックして選択
- パターンで [方向] を「線形」に、[タイプ] を「連続」に変更します。
- 必要に応じてポリゴンの幅や長さを調整して見た目を整え、[コンテンツ] ウィンドウでポリゴンの名称を「表層線」に変更します。
- [表層] 3D レイヤーを非表示にします。
- [挿入] タブの [グラフィックスとテキスト] で詳細をクリックし、[四角形テキスト] をクリックします。その後、表層線の上部に四角形を描画します。
- 既存の「テキスト」を削除し、以下のように入力します。
- 表層: -200m
- 画面右側の [エレメント] ウィンドウで [テキスト シンボル] をクリックし、[回転] を展開します。
- 「表層線」と平行になるように角度の値を調整します。本記事の例では「-5°」に設定しました。
- 表層線に沿うようにテキストを移動します。
- [コンテンツ] ウィンドウでテキストの名称を「表層テキスト」に変更します。
- [コンテンツ] ウィンドウで [表層線]と [表層テキスト] を Ctl を押しながらクリックして選択し、右クリックして [コピー] をクリックするか、選択した状態で Ctl+C をクリックしてコピーして、3 回貼り付けます。
- 各線を、ここまでの手順に倣って中層、漸深層、超深海層のレイヤーに重なるように移動、調整し、各テキストの内容をそれぞれ以下のように変更します。
- 中層線の上部
- 中層: -1,000m
- 漸深層線の上部
- 漸深層: -3,000m
- 超深海層線の上部
- 超深海層: -6,000m
- 中層線の上部
文字が背景と重なって読みにくい場合は、[テキスト シンボル] タブの [ハロー] を設定すると見やすい表現が可能です。
- [コンテンツ] ウィンドウで名称をそれぞれ以下のように変更します。
- 中層用のラインとテキスト
- 中層線
- 中層テキスト
- 漸深層用のラインとテキスト
- 漸深層線
- 漸深層テキスト
- 超深海層用のラインとテキスト
- 超深海層線
- 超深海層テキスト
- 中層用のラインとテキスト
- [リミティングファクター号到達地点] を除くすべての 3D レイヤーを非表示にします。
ステップ 4: 3D ジオラマにプレートや最深部のテキストを追加
3D ジオラマにプレートの名称等を示すテキスト情報を追加し、見る人に情報が伝わるように表現します。
- [挿入] タブの [グラフィックスとテキスト] で詳細をクリックし、[四角形テキスト] をクリックします。その後、「地層 正面左」ポリゴンの中央に四角形を描画します。
- 既存の「テキスト」を削除し、以下のように入力します。
- フィリピン海プレート
- 背景と同化して文字が見えにくいため、[エレメント] ウィンドウの [テキスト シンボル] タブで [テキスト塗りつぶしシンボル] の [色] を「白 (1 番左の列の最上部)」に設定します。
- [サイズ] を「25 pt」に設定し、位置を調整します。
- 同様の操作で位置やサイズを変更し、それぞれ以下のようにテキストを作成します。
- 太平洋プレート
- 位置:「地層 正面左」ポリゴンの中央
- サイズ: 25 pt
- リミティングファクター号到達地点
- 位置: [リミティングファクター号到達地点] 3D ポイントの上部
- サイズ: 18 pt
- 伊豆・小笠原海溝
- 位置: 3D ジオラマの左側中央
- サイズ: 60 pt
- 太平洋プレート
- [コンテンツ] ウィンドウでそれぞれ以下のように名前を変更します。
- テキスト → フィリピン海プレート
- テキスト 1 → 太平洋プレート
- テキスト 2 → リミティングファクター号到達地点
- テキスト 3 → 伊豆・小笠原海溝
レイアウトに文字情報が追加され、分かりやすい 3D ジオラマを作成できました。この3D ジオラマをベースに、さらにグラデーションやテキスト色を調整したり、細かな装飾用のエレメントを追加したりすると、よりリアリティーとデザイン性を向上させた3D ジオラマを作成できます。
まとめ
第 3 弾となる今回は、海底地形の 3D レイアウトにポリゴンやテキストを追加し、3Dジオラマとしてのリアリティーを向上させる方法についてご紹介しました。本シリーズで紹介したレイアウト テクニックを活用することで、ArcGIS Pro で作成した 3D シーンをより効果的に他者に共有できます。
ArcGIS Pro のレイアウトでは、ポリゴンやテキストのシンボル設定を工夫することで、多種多様な表現が可能です。今回ご紹介したレイアウトは一例ですので、皆様のセンスに合わせて色や形、サイズなどデザインを調整し、3D ジオラマの作成に挑戦してみてください!
参考情報
- GEBCO ホームページ
- 名古屋大学研究成果発信サイト
「【速報】日本人の最深潜航記録を60年ぶりに更新! ~小笠原海溝最深部9801m(暫定値)にフルデプス有人潜水船リミッティングファクター(Limiting Factor)号で潜航調査~」 - 使用した海底地形データの出典は以下の通りです。
- GEBCO Compilation Group (2024) GEBCO 2024 Grid (doi:10.5285/1c44ce99-0a0d-5f4f-e063-7086abc0ea0f)
- Unsplash より Conor Sexton の画像を入手し、水面のシンボルに使用しました。