ArcGIS Pro をベースにした商圏分析・エリアマーケティング特化型アプリケーション「ArcGIS Business Analyst Pro」(以下、BA Pro) の最新バージョン 3.5 を、2025 年 6 月 24 日 (米国時間)(2025 年 6 月 25 日 (日本時間)) にリリースしました。本記事では、BA Pro の主な機能強化をご紹介します。
目次
カラー コード レイヤー
2 つの変数をマッピング可能
カラー コード レイヤーは、統計データを簡単な操作でマッピングできる機能です。従来、カラー コード レイヤーで選択できるのは 1 つの変数のみでしたが、BA Pro 3.5 へのアップデートで 2 つの変数を選択可能になりました。2 つの変数間の関係を 2 変量色や等級シンボルで表現可能です。
下図では「一般世帯数 借家 (民営借家・公営借家等・給与住宅)」と「一般世帯数 核家族世帯 (うち夫婦と子供)」を変数に設定し、2 変量色シンボルと等級シンボルで表現しています。借家世帯と子供がいる核家族世帯の両方が多い地域、片方のみが多い地域が可視化され、住宅販売のチラシのポスティング範囲の選定などに活用できます。

濃い紫色は借家世帯と子供がいる核家族の両方が多いエリア、青色は借家世帯が少なく、子供がいる核家族が多いエリア、ピンク色は借家世帯が多く、子供がいる核家族が少ないエリアを示します
統計データの分類方法に標準偏差が追加
[自然分類]、[等量]、[等間隔]、[等比間隔] に加えて、[標準偏差] を利用可能になりました。標準偏差を使用することで、各区画の統計データの平均値からのばらつき具合を可視化できるようになりました。
区画の選択方法の改善
区画の詳細レベルの選択リストが常に表示され、より簡単に区画レベルを切り替えられるようになりました。
ベンチマークの比較
解析結果がよりわかりやすく可視化されるように
ベンチマークの比較は、商圏などの複数サイトの統計データや属性値を比較する機能です。BA Pro 3.5 では、平均、中央値、標準偏差を比較基準 (ベンチマーク) として使用できるようになりました。マップ上のサイトは、ベンチマークの値を境に色分けしたり (ベンチマークの上下)、値が大きいサイトから値が低くなるにつれ色がグラデーションするように表現したり (高から低) できます。
結果ウィンドウのテーブルがマップと連動して色分け表示されるようになりました。また、結果ウィンドウに散布図とヒストグラムが追加され、統計データの傾向を把握しやすくなりました。[Excel にエクスポート] から出力した Excel ファイルにも結果ウィンドウと同様の色分けが反映されるようになりました。
隣接区画の絞り込みが簡単に
ベンチマークの比較では、比較対象のサイトに重なる区画 (市区町村、メッシュ、町字・字等など) を選択できます。従来は、すべてのサイトに重なる区画がリストに表示されており、使用したい区画を見つけにくいことがありました。BA Pro 3.5 ではサイト フィルター機能が追加され、特定のサイトに重なる区画のみを絞り込み可能になりました。
適合性解析
ワークフローの改善
条件設定などがフローティング パネルとして表示され、それぞれのジオプロセシング ツールを開かずに解析を実行できるようになりました。データ ブラウザーからデータを選択すると、[適合性解析] ウィンドウが自動的に開きます。設定した条件を並べ替えることも可能です。
フィルター範囲外のサイト表示
条件のフィルタリング時、以前はフィルター範囲外のフィーチャがマップ上で非表示になっていました。BA Pro 3.5 では、範囲外のフィーチャは塗りつぶしなしのアウトラインのみで表示されるようになりました。
テリトリー デザイン
テリトリーの編集時に、違反を表示するツール チップが追加されました。属性や距離の制約などのテリトリーの違反が表示されます。
その他
- 適合性解析やテリトリー デザインのワークフローで行った編集の「元に戻す」「やり直し」が可能
- 結果ウィンドウで散布図やヒストグラムが利用可能
- 結果ウィンドウのサマリーで統計カードを表示
- データ ブラウザーで変数の順番変更が可能
- データ ブラウザーのすべての変数のリストが改善
おわりに
今回のアップデートでは、ArcGIS Business Analyst Web App で先行して使用可能となっていた、カラー コード レイヤーでの 2 変数の選択や、ベンチマーク比較でマップとテーブルの色分けが連動する機能が BA Pro にも搭載されました。さらに便利になった BA Pro 3.5 をご活用いただければ幸いです。